安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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プーチンの「外交引き分け論」
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( 2013年 5月 1日 水曜日


●半分コで仲直り、ロシア国民はノー
プーチン大統領が阿部首相との会談席上、「面積当分」によって領海問題を解決したノルウェーとの解決策を述べた。このことが日本のメディアで話題になっているが、軽卒ですね。

阿部首相はイルクーツク声明が原点というほど問題は単純ではない。あれはプーチンが当事者の会談結果、4島の帰属問題、つまり領土問題を話し合ってゆくことで合意したのであって、相手の森喜朗首相(当時)も4島返還論者ではない。4島の日本帰属を前提に交渉すると規定するものではない。どこにもそんな文脈はない。

●露諾バレンツ海境界画定の経緯

そもそも露諾間の領海は、北極海漁業で国益が衝突したバレンツ海の境界をめぐる争いである。やはり戦後すぐに問題化し、40年の交渉をへて、プーチンが十年の歳月をかけて、メドベージェフが大統領のときに合意した領海画定である。

この間の経緯事情は当コラム「ロシアとノルウェー、40年を経て海境確定」(2010年 4月 28日)に詳しく書いた。ロシア側のセンターライン、ノルウェー側のセクターラインのぶつかり合いを折半してミドルライン(中間線)で平和的に解決した。これは歴史的成果であり、プーチン自慢のたねですから、阿部さんに教えたくもあろう。しかし海と人間が住む国土では難度がちがう。

バレンツ海資源開発にロシアはノルウェーの技術参加がほしかった。いまシベリア開発に日本の知識と技術と資本が必要だ。日本が必要だからこそ、習近平はロシアの天然ガス拡大輸入でプーチンの色よい返事を貰えなかったのである。

●プーチンの再選があれば
バレンツ海解決に10年要したプーチンだが、次期もありうるか、再選があればいまは一期6年だから10年居座るが、なければあと4年だ。より難しい領土画定で面積折半は、ロシア国民が納得しない。日本が面積当分に固執すれば元も子もなくなる。4島返還原則を持ち出すのは交渉拒絶を招くだけ、そうなれば未来永劫に現状は動かない。

歯舞、色丹だけではもちろん無念だが、平和条約が成立すれば、世界ポリティックスに大変動をもたらす。欧州が実力より尊大に振るまうのは、米ロ両方と平和条約をもつことからくる自信である。したがって中国も欧州に無理難題は言いにくい。
日露の平和条約は、ロシアより日本側にメリットが多い。(了)






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