安達正興のハード@コラム

Masaoki Adachi/安達正興


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江戸−明治の絵図に見る狼
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( 2016年 10月 22日 土曜日)


●神話に典拠する狼信仰の神社、狼を描いた絵師
狼を祀る神社は、本州の各地にある。中でも奥秩父の三峰神社には狼の博物館が有り、狼オタクのメッカであろう。狼の狛犬が立っている。
武蔵御嶽神社(むさしみたけじんじゃ、東京都青飯梅市)は奈良時代から修験道の霊山でもある。東征時追手に追われ白狼に助けられたとの伝承により、狼を「お犬様」として御影が犬になっている。
京都には大川神社、奈良には十津川の玉置神社など、全国で20社は下らない。

古事記・日本書紀にある日本武尊の東征に現れる白狼を題材に描いた画家、浮世絵師は多い。ここでは拙子がヒマに任せて見つけた画像を転載する。奈良春日神社にある狼の絵図はすでにコラムにしたので省いた。


三峯神社 日本武尊の東征に道案内をする白狼 (板絵)


三峯神社 神の使い狼の図(杉板絵)


月岡芳年『月百姿・北山月』(木版画、明治16年)狼と遭遇し、笙を聞かせて難を逃れた豊原統秋の伝承を描く。


草薙の劔を履くヤマトタケルノミコト。敵に囲まれたミコトを導いて救った狼。挿入された女性は后の弟橘比売命(オトタチバナノヒメ)、荒れる海に入水して波を沈め、夫のヤマトタケルを救う。
作者不詳  Source: By Brent Swancer, mysteriousuniverse.org


掛け軸、「狼声の月夜」野口幽谷筆 明治初期

水墨画 明治時代? 作者不詳

「月に狼図」上田公長筆 江戸時代 大阪市立美術館蔵

「博物館獣譜 オオカミ」狩野常信ほか狩野派の作 東京国立博物館蔵
この絵図は『江戸図譜』を明治初期に博物学者・田中芳男が編纂したもの


「諸獣之図 狼」(博物館獣譜) 江戸時代、狩野派筆、東京国立博物館蔵


「豺」(サイ、やまいぬ)明治九年 英人クラヤ方にて写す。狩野派筆
東京国立博物館蔵


福島県相馬郡飯館村に鎮座する山津見神社の天井絵 明治37年に拝殿造営の時に描かれた。2012年拝殿火災のため消失、2015年復元され流。


狼の雌雄と仔狼、杉板に描かれた上記天井絵の一枚。


妖怪画集『絵本百物語』より「鍛治が嬶(ばばあ)」 竹原春水筆 江戸時代
高知室戸地方に伝わる説話-土佐国野根(安芸郡野根村)という村で狼に食い殺された鍛冶屋の女房の霊が、狼にとり憑いて人を襲い食らうようになった。

  
江戸時代の図説百科事典、「和漢三才図会 巻38獣類」に描かれた「狼」
【狼は本邦に所々有り、豺(山犬)の属也、穴居し、形大きさは犬の如し。鋭い頭尖った牙白い頬、脇高は前広く、後ろ足は甚だ高からず。雛鴨鼠物を食う、其の色概ね黄黒(茶色)、また蒼灰色のもの有り、其声は大きくまた小さく啼く。児の泣き声を真似て人を魅す】 以下詳細に狼の諸相が漢文で綴られている。中に、狼の牙を身につけるとお守りになる、狼の皮を纏うと暖かくしかも邪悪の気をしりぞけると有り、狼の喉仏は風邪を治すなど生薬としての効能が列挙されている。さらに「送り狼」について、夜道を行く人の頭上を何度も跳び越すが、恐れずに歯向かわなければ害はない。しかし恐れて転倒した人間には喰いつくとされる。また、火縄の匂いがすると逃げて行くので、山野を行く者は常に火縄を携行すると良い、と記されている。



(CM)



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