安達正興のハード@コラム

Masaoki Adachi/安達正興


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奈良零れ百話・モリアオガエル
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( 2016年 10月 19日 水曜日)


●春日山のモリアオガエル

モリアオガエルは春日山にしかいない!と少年時代に言われていた。ほんとは奈良盆地の田んぼにも、吉野の山河にもいたらしいが、その頃の接しは日本で唯一モリアオガエルが住むところだと信じていたのである。だから、春日山のどこに行けば捕まえられるかは、場所は秘密にされていた。

奈良県では、現在は田んぼの脇の草叢に卵を産み付けていたモリアオガエルは絶滅したそうで、今では一般の人は立ち入り禁止になっている春日山にだけ生息する、でもまあ場所は秘密でなくなり、遠慮なく行ける場所になりました。しかも全国いたるところに生息していて、水族館(岐阜、世界淡水水族館)でも飼育、繁殖に成功している。春日の天然記念物モリアオガエルはもはや神秘性を失ったと思いきや、然にあらず。原始林(と称される)に棲むモリアオガエルは別格なのだ。

その昔、我が家の裏地で見つけた、アマガエルの小さく瑞々しい緑色の蛙を、モリアオガエルだ!と喜んで仲間に見せたものである。子ガエルだからまだ木に登れないなどと、といい加減にはしゃいだ時代が懐かしい。

●カエル、木に登る

モリアオガエルの指先は吸盤、ヤモリのような吸盤があって木に登る。英名-Forest Green Tree Frog. 実にヘンテコな英語だと思ったら、日本の本州に特有の品種ゆえ、「森青蛙」の直訳なのです。いいですね。ではガマガエルは英名でなんというか、Eastern-Japanese Common Toad. 普通のヒキガエルとはねー。

モリアオガエルが木に登って降りてこない樹上生活をするようになった理由は、天敵から身を守るためとされるが、マムシは木の上にも這ってくる。鳥の餌食にもなるだろう。まあそれでも地上にいるより安心だが、水中にいればアカハライモリ、ウシガエル、水生昆虫、ヤンマのヤゴにまで食われるという。水中オタマジャクシの頃と、陸に這い上がった頃は、出会う生き物全てが敵である。だから卵の数が300〜800あり、自然界で釣り合うようになっている。

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上;まだ尻尾のある子ガエル、上へ上へと這い上がる(阿武隈カエル図鑑より)

右上;木に登ったアオモリガエル(モリアオガエル北摂の生き物より、大阪府池田市五月山)

●春日山、水分(みくまり)の沼

春日山中、水分神を祀る鳴雷神社の西下方に、丸い小さな沼・竜王池がある。この直径10mくらいの竜王池を水源として、北流する佐保川と、南流する能登川に分水する。この辺りは照葉樹が多く、植生が豊かで、サンショウウオもいる自然が残っている。しかし、簡単に山歩きできるところではない奥深い山中である。

竜王池に被さる木々の葉に、モリアオガエルが産卵するので、その様子を撮影する人が少なくない。京都や大阪のもっと行きやすいところでもモリアオガエルを撮影できるのに、春日山の生き物は聖なる感じがしますからね。






Pnorama Box制作委員会


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