安達正興のハード@コラム
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奈良零れ百話・唐招提寺の三歌碑 (1)
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( 2016年 9月 27日火曜日)
●芭蕉の句碑 若葉して御目の雫 拭ばや (わかばして おんめのしずく ぬぐはばや) 元禄元年1688、松尾芭蕉が唐招提寺を訪れ、鑑真坐像を目の前に拝して、詠んだ句である。 句集『笈の小文』の前書きに 『招提寺鑑真和尚来朝の時、船中七十余度の難をしのぎ給ひ、御目のうち潮風吹き入りて、 終に御目盲ひさせ給ふ尊像を拝して』とある。 視力を失ってまでも遂に日本に渡来した写実的な鑑真像の目に、芭蕉は涙を感じ見たのであろうか。盲目の人はよく目を濡らしていることから、この句は理解しやすい。元来、鑑真坐像は開山堂(本願殿)に安置されていたので、この句碑は開山堂正面の石段左にあり、ブッシュで半分隠れた石の句碑が見える。 ●鑑真の身代わり坐像 「御影堂」は、興福寺一乗院の寝殿をこの地に移築して復元した建物ですから、どう見てもお寺には見えない。が、大変美しく、こういう風情もオツなものです。国宝鑑真像を安置するにふさわしい。秘仏として年に一度しか開扉されなくなった。 しかし彩色レプリカの「身代わり鑑真坐像」が平成25年につくられ、改修された開山堂に置いていつでも拝観できるようになった。観光客にはたいへん都合がよく、唐招提寺としても安心だ。 ただ、句碑の意をしんみり解るためには、身代わり像では無理です。オリジナルの乾漆像を思い浮かべるしかない。 句碑を建立(18したの大阪の俳人・松井三津人(みつんど)、関西の所々に芭蕉の句碑を建てた人物、裏面に自作の受け句を刻んでいる。 |
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