安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ノルウェー、ヘリ事故
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( 2016年 5月 3日 火曜日)


金曜日朝に、ベルゲンの西南にある小島に、オフショーリグから飛び立ったヘリが墜落、乗員13人が一瞬に亡くなった。この事故はこの国を震撼させる事故、TV。新聞はこの件で持ちきりです。世界的にもニュースになっているので、その様子をお伝えします。

●オフショー油田で潤った国
この国は北海石油から、ノルウエー海、さらにバレンツ海まで広大な経済水域内石油リグを持つオフショー油田の資源国であり、石油ガス産業がこの国の経済基盤を強くした。

ここから上がる収入を今は「年金ファンド」と呼ぶが、政府のソブリン基金のことであり、貯蓄と投資で政府は巨大な黒字である。日本株を6兆円ほど保有しているのは、ま、ピーナッツぐらいか。石油産業がジリ貧の今、「年金ファンド」はまずまずの成績を維持している。儲けが悪い、児童労働を使う悪徳企業に投資するな、などとどっちからも非難されてきたファンドだが、投機を避け堅実な投資が良かった。

石油価格の暴落で、この国の石油産業はかつてない難局を迎え、リストラや、下請け企業の倒産が相次ぎ、エンジニアの失業が社会問題になっていた。最近やっと他部門への再就職が追いつき、失業者の増加はストップしたので、政府の無策をなじる野党がこの頃静かになった。

● 事故は空港へ降下を始めたときに起こった
ノルウエーは石油減産を余儀なくされているが、10数台あるすべてのオフショーリグで採油活動を続けている。理由を書き出すと長くなるので飛ばすとして、オフショーリグへは複数あるヘリの民間会社が運営している。ベルゲンなら空港の中の離れた別棟にオフショーリグへの人員や荷物を運ぶヘリの専用発着場がある。

墜落したヘリはベルゲンの西にあるGullffaksリグ(写真)からベルゲン空港に11人の乗員を乗せて戻る途上、これから空港に降りるために下降し始めた時に起こった。空港着陸の9分前、非常シグナルを出す余裕もない突発事故だった。


ノルウェー西端とシェットランドの中間にあるリグ「グルファクス」

トゥーロイ島というのは、外海に面した南北に長く連なる小島の一つ。島の最高地点が76mですから北海嵐が吹き荒ぶ厳しい土地である、拙宅の真西にあり、望遠鏡で見える。むき出しの岩とブッシュがあるが、樹木はほとんどなきに等しく荒涼とした岩原だが、強い海風が当たらない肺が市側の瀟洒な住宅地では、日常品の買い物に不自由しない上、ベルゲンまで大小の橋を渡って車で1時間あまりの距離である。


事故を起こした「スーパーピューマH225」、エアバスのヘリコプター。

昨年まで「ユーロコプターEC225」と呼ばれていたが名称変更。定員は乗客数19人と乗員2人。現在イギリスとノルウェーではこの機種すべてを遺族と安全飛行に考慮して運行停止。事故を起こしたヘリの会社も自粛、休業して事故調査に協力しているので、リグへは他者がエアバスの事故機種以外のヘリを使って運行している。

●エアバスのヘリは安全か
イギリスのエアバス工場で製作されたこのヘリはご覧のように回転翼は5枚、このローターがクルクルと竹トンボが舞い降りるように空から降りてきて、Tur?y島の丘の上に着地。この状況を島の住人(オフショー勤務)がヴィデオに収めていた。ローターは空中では20〜30秒だったが、機体は回転翼が外れた瞬間に落下、一直線に海岸に激突、爆発して大破したあげく主要部分は4メートルの海底に沈んだ。素人判断でも明らかにモータと接続するローターの軸が突然モーターから外れたのが直接の原因だ。操縦士ミスではなく整備不良だろう。

2009年にイギリス側で乗員16人全員が死亡する事故を起こしている。原因は異なるが、やはりローターの異常で引き返したが制御不能のため着陸に失敗、爆発して大破した。


引き上げられるヘリの残骸。

●無残な遺体
今回の落下事故でも当然、全員死亡である。機体から潜水夫が運び出した遺体他、墜落炎上した海岸に散乱した11人は特定できたが、何しろ彼方に片腕、こちらに足首など細切れで傷だらけですから残った二人の本人確認は月曜日に遅れた。
潜水士ほか海軍のミニUボートも参加して捜索。海岸に散らばる機体とおぼしき小片を集め、ベルゲンの海軍基地に運んで格納庫原因究明中。ブラックボックスが海中から発見されたが、原因に結びつく内容が少ないらしい。また、陸側に散乱した布地や金属小片など、警察、自衛隊が不必要で残したゴミは地元の人たちボランティアが片付けしました。

乗員はハリバートン(中東での戦争に危険な役の兵士請負で有名)やシュランベルジュ、アーケ・グループなどリグ作業サービスの社員で、本社スタトオイルの社員は一人、30代の女性を除き、働きざかの40代男性がほとんどである。60代のおじいちゃん世代もいる。アバディーンに住むイギリス人とベルゲン在住のイタリア人がいるが邦人はいなかった。過去リグをシャトルして仕事をしていた外資系社員に2、3人の日本人がいたが、今はリグで働く邦人はいないようだ。


トゥーロイ島の丘に舞い降りたヘリの回転翼。

こういう際にパっと落下傘が開かないものかと、拙子は思うのだがバカげているだけで許されるが、事故現場を写真に収めようとドローンを飛ばす困った人が、どこの国にもいるものですね。ドローンはすぐに警察が禁止し、ニュースでも注意を促しておりました。


犠牲者の身体部分やヘリの残骸収集に当たる自治体の職員ら。






Pnorama Box制作委員会


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