安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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犬を無理置きした人
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( 2016年 1月 12日 火曜日)


●常に飼い犬がいた頃
小さい頃、我が家にはいつも犬がいた。中型犬で何代も子から子へいたが、おなじ顔でおなじ格好の雑種でいつも「ボル」という同じなまえである。ある時はメスの犬で、5匹ぐらい産んだことがあり、順次里親にもらわれていったが、一匹は嫌がる中学校の恩師に母が無理やり置いてきたことがある。

●恩師の微苦笑
同窓生たちが勤め人になったある同窓会の時、恩師は別の中学で校長をしておられたが、小生に「あの時はアダチクンのお母さんに犬 置いていかれてなあ」と独特の品のよい苦笑で言われたことが何度かある。先生にとっても想い出深いエピソードなのであろう。

あの時とはK先生が空き巣に背広や衣類など持ち去られて、着るものに困っておられた日々である。母は自分の子供には放任主義で教育不熱心だったが、PTAが好きなのだろう、五人の兄弟すべからず母がPTAででしゃばるのが嫌だったが仕方ない。

●PTA好きの母
母は背広の新しいのやら靴やらをPTAから贈ってK先生に喜ばれたが、母の申し出を断れる先生はいない。そんな母だったから、我が家に残った雑種の子犬一匹を、「用心に犬を飼いなさい」と有無を言わさず先生の家に置いてきたのである。

K先生の家は当時まだ田んぼがちらほらする一軒家で、奥様も仕事をされていたので確かに空き巣に狙われやすい。犬など飼ったことがない先生は困り果てながら庭にくくりつけ、この犬を死ぬまで飼っておられた。

一度まだ中学生の頃、お正月の挨拶(遊び)に級友たちと先生宅を訪問した。ところが我が家から来たこの雑種の犬が小生をを忘れたのか、すごく吠えるのである。「誰に吠えてんのか、ボル、オレ忘れたンか」と叱ると、
横を向いて目をそらしてしまった。まだ生まれて間も無い子犬だったから忘れてしまったに違い無いが、気の弱い犬だ。しかし懸命に吠えるところは番犬の役に立っているようで、その後空き巣に狙われたことが無いのだから、故人になられた先生も怒ってはいらっしゃらなかったと思いたい。

*母のエキセントリックな思い出、伝え聞いた逸話はいくらもあるが、私的なことでもあり、今回で我が亡き母のエピソードを終える。






Pnorama Box制作委員会


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