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奈良零れ百話/奈良国立博物館(2)
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( 2015年 4月 11日 土曜日 )
登大路町(7)にあたるコラムです。
●正面全景、ノッペラボウの飾り縁 明治27年(1894) に完成した。欧州で当時建てられた、公共建造物にヒケを採らない堂々たる容姿。屋上屋の明かり取りは銅板葺きも美しい。 しかしながら、しばらく見ている装飾過多に見えるのに、どこかノッペラボウな感じがするのはなぜだろう。ギリシャ風の柱や欠円形の妻など、こういう様式にとらわれないこの頃の建築を「新バロック」というらしい。アールヌーヴォーではない。 つまり、現在「ぶつぞう館」に改称されたこの建物は、欧州に置けるローマ風古典式、中世ゴシック、ロマネスク、バロック建築などゴチャマゼの折中なのである。 ▽ 細部を飾ってあるが、たとえば正面両脇の半円アルコーブには、本来なら大理石の石像が置かれるのだが空っぽだ。 ▽ 紋章や、人面、あるいは獅子など獣面で飾る上部は枠だけである。壁面上部の方形縁飾りは縁だけで内部装飾は空っぽのまま。西口も飾りなし。 ▽ アーチ型の血縁妻に蔓草模様が施されているが、中央の円はのっぺりのママで良いのだろうか。太陽とか鏡を意味する場合もあるが、よくわからない。 ひょっとしたら、設計した片山東熊氏は、装飾の工芸家に委ねるつもりが、そのままになったのだろうか。あるい縁取りだけで良しとしたのだろうか。何れにしても疑問がのこる。 ↓参考に1898年竣工なった「ウイーン国立歌劇場のエッチング」です。奈良の博物館の後に建ったが、彫刻、壁面彫刻がみごと。 ●装飾なしのシンプルな同時代の博物館 一例に「ベルゲン大学自然歴史博物館」1866年竣工の写真です。動物.植物、地質鉱物のセクションがあり、裏にこじんまりとした植物園がある。 拙子が2年ほど地質鉱物部の展示に関わったところで、地下倉庫から屋根裏倉庫まで知っている。壁面は厚い漆喰、角だけ石組みで質素な作りだが、天井がとびきり高く、広い柱なしの室だが滅法重い展示物にも絶える頑丈さ。外壁装飾のかわりに大きな窓が竝部。この窓から太陽光が燦々と入ると展示物に悪いので、展示室は厚い二重のカーテンで閉じられている。現在大改修中でリニューアルがいつ終るのか、いつ再開するのか「未定」と公式サイトにある。この辺が突貫工事をしない北欧らしい。 |
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