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ISISがキリスト教徒90人を拉致
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( 2015年 2月 25日 水曜日 )
●アッシリア人キリスト教徒
古代オリエントの統一を最初に成し遂げたのは、世界4大文明発祥の地のひとつメソポタミヤに都市国家から出発したアッシリアである。この都市国家建設が紀元前二千年ごろとされ、イスラエル、バビロン、エジプトを滅ぼして全オリエントを統一、首都をニネヴェに置いたアッシリア帝国が出現した。勝因は初めて鉄器による武器を使用し、真紀元前のことですから征服のやり方は凄まじく、今日のISIS(イスラム国)より容赦のない殺戮であったという。 しかし怖れられたアッシリア人に負けず劣らずの民族が割拠して60年そこそこでアッシリア帝國は滅ぼされ、4王国に分裂するのであるが、古代史を一挙に現代にもってくると、アッシリア人というのは国家こそ持たないが 中東諸国に分散して一キリスト教社会を形成し、文化の独自性を守っている。このあたりはユダヤ人やクルド人に見る強い宗教的民族意識があり、ユダヤ人はホローコーストに対する西欧の贖罪意識からイスラエルなる新国家を得、クルド人はイラクで自治権を持ち、トルコ内では最近になってある程度の自治が認められるようになった。だがアッシリア人は営々として自分たちの国も自治権ももたない悲しい運命にある。 ●シリア住むアッシリア人 シリア内紛が始まった4年前には約4万人のアッシリア人がいた。アラム語を話し、ネストリア東方教会やシリア正教に属し、シリア人口2,200万人の10%を占めていたのである。現在は度重なるISISによる迫害でシリアを脱出した者が多く、アレッポやホムスではゼロになったとみられる。現在殆どがシリア北東隅、トルコとイラクに挟まれたハサカ地方に居住しているが、今回襲われたタムルを脱出してクルド勢力の強いハサカ(Hassakeh)の町やカミリ(Qamishli)に逃げた者が3000人いた。 最近リビアのISIAがエジプトから出稼ぎにきていたコプト・クリスチャンを殺害し、エジプトが空爆したように、ISISはキリスト教徒を十字軍と呼んで敵とみている。改宗か拉致かを踏み絵して、家財道具を差し出せ、税金を払えと脅して来たのである。 イギリスに本部を置くシリア人権監視委員によると、トルコ国境の町Tal TamrをISIS兵が24日の明け方に急襲、アッシリア人の男女子供90人を拉致したという。別の監視組織は70〜100人が連れさられたと発表し、一方ISISラジオは数十人の十字軍を拉致したと声明を出した。皮肉なことだが、シリアでキリスト教徒が安全なのはアサド政府軍のいるダマスクスということか。 ●拉致の理由 これはもう明らかな事だが、クルド兵が米のISIS基地空爆の援護を受けて、ISISに攻勢に変じた。ISIS側に対してキリスト教徒拉致によって米の空爆を躊躇させ、クルドの進撃を止める狙いがある。もうひとつの理由はクルド側に捕虜となったISIS兵とのスワップである。 ●ISISに配慮を示す平和ボケ 身勝手で展望のないISISはイスラムに名を借りた犯罪集団にすぎない。イラクに位置する古代都市ニネヴェの城壁を今年1月27日にISISが爆破したことに憤慨しない人はいないだろう。ISISとは、歴史、人命に一切の尊厳を有せず、いかなる憐憫も不要な犯罪軍団なのである。そのように扱ってこそISISと対峙できるのであり、余計な忖度は一切不要。この集団の発生や手法にオバマやキャメロン、果ては安倍晋三まで持ち出してあれこれ喋る人物や後藤カメラマン称賛の言が跡を絶たないことを、それがしは残念におもう。(了) |
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