安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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忘れ物が還る国
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( 2015年 1月 13日 火曜日


●イタリア式欠勤狂想曲
それがし、今帰省中ですが。そのことをまざまざと感じたのは、関空出口のリムジンバス乗り場での事。

関空についてそれがしの居候地までリムジンバスで行く。とても便利である。関空出国出口側の前に大阪、和歌山、奈良方面各地に向かうリムジンバスの停留所があり、それぞれ荷物を預かってくれる係員がいて、トランク荷物をバスに積み込んでくれる。それがしはリュックと免税品の袋を手荷物として乗車するのだが、バスが来たとき身ひとつで乗り込み、ゆったりした気分でうとうと気持ちよく座っていた。

約1時間15分の行程のうち、高速道路をおりる手前辺りで、運転手が電話でなにやら話している。そして乗客といっても4人しか居ないのだが、乗客に向かって「赤い袋とビニール袋を関空乗り場に忘れたお客様はおられませんか」と言う。

そのときハッと気付いたそれがしは、慌てて運転手さんに赤いリュックとお酒の入った免税店のビニール袋はわたしの忘れ物です、と申し出る。で、運転手は相手、奈良交通事務所にその旨告げると、「はい、その通りの荷物です」と確認、あと、それがしの名前と携帯を奈良交通事務所に知らせ、では次の同じ目的地便に乗せて藤の木台というわたしの降りるバス停でお渡ししますということになった。

そして次の便が定刻に到着し、そのバスの運転手さんがそれがしに手渡してくれ、受取証にサインしていると、それがしの携帯に電話があり、事務所本部から「バスが到着しましたが受けとりになられましたか」と確認してきた。

いや、おどろくほど親切である、何しろ預け荷物にできないHDなど大事なものをリュックに入れていたのを忘れたのだからなみの軽率ではない。もしバス内に連絡がなければ降りる迄気がつかないし、戻ってくる事が奇跡である。それがこの日本では、乗り場の係員から本部へ、複数のバス運転手が連携して忘れものした本人をさがして届けてくれるのだから、たいへんな労力をお掛けしている。それなのに無料サービスであり、リュックには大切なHDやカメラ、現金などリュックにあった物品はすべて揃っていた。だれも抜き取りなんかしないのだ。

バス預け荷物にタグをつけて入れてくれる人、運転手さんなどは社会的にエリートではなく、コツコツと底辺を支える労働者である。この人達の何と親切で誠実なこと。欧州では何処でも空港バスのトランク荷物の出し入れは自分でやる。運転手は開閉するだけになれているので、いつもバスの荷物を受けてタグを付け入れてくれるオジさんたちや、駐車場の交通整理のオジたちを不要な職種と断じていたが、こういう底辺の作業をする誠実なひとがいるおかげで、社会が正確に回転し、落とし物が戻ってくる。ありがたいことです。(了)






Pnorama Box制作委員会


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