●白人が統治する黒人多数の町
米セントルイス郊外のファーガソンで白人警官に射殺されたマイケル・ブラウン(18歳)を射殺した。この事件を起訴するか不起訴にするかを決めるミズーリ州大審院が「不起訴」を発表。ファーガソンの町は騒然、道路上の警察車ほか数台の車や、建物に放火、お決まりの略奪もあって、米の抱える黒人問題の根深さを見せつけた。
ファーガソンは人口の65%が黒人、貧困者が多く失業率が高い。警官は殆ど白人、市議会、州議会も白人議員が占め、黒人の若者は疎外感が強く当然、白人憎悪が否応無く根底にある。今回の陪審員12名のうち白人9名、黒人3名。人口比で平等に配分するなら白人4、黒人8にすべき。そして大審院で長期間、多くの証言者を集め陪審員に資料を提供したのはセントルイスの郡検察官マクローチ氏(Robert McCulloch)は、不起訴を発表した検察官であるが、白人である。
マクローチ氏の父は警察官で黒人に殺されている。そのうえ氏はファーガソンの警官たちとも懇意で、そういうことをほじくり出したらきりがないのであるが、暴徒にはとうてい許せない人選にちがいない。
それがしは事件を8月15日のコラム「紛争の夏」の一項に次のように書いた。
> ●暴動のミズ―リ
白人警官が無防備の黒人少年18歳を射殺したことでおこった抗議デモが一週間立っても鎮静せず、非常事態宣言・夜間の外出 禁止令が発動された。そうなると普段外出しない者まで出て来て略奪にいそしむのである。セントルイスから人が集まるので余計にやっかいだ。黒人が白人警官 に暴力を振るわれるというのは、南部でなくてもあるようで、白人の有色人種差別は市民レベルがさがるほど意識のなかに根差している。これはまた社会不満が つのる黒人層の恰好の抗議機会であり、彼らはすぐ暴徒化する。オバマも頭が痛い、エリック・ホルダー司法長官を現場ファーガソン市に派遣した。
それはそうと、この18歳の射殺された少年がスーパーで葉巻を強奪、スーパの出口に追ってきた店員に「文句アッカ」てな態度で脅している映像ですが、少年 は大男で店員は小さい。マンガのシーンみたいだ。この大男がスーパーを出て道路の真中をよたって歩いている。車通行を妨げているので警官が注意したら『文 句アッカ』!てな態度です。警官は拳銃を出しても平気な態度にカッと血がのぼったのでしょう。<
●メディアの偏向報道
それほど間違った内容ではなかったが、最後のところは >車通行を妨げているので歩道を歩くように注意したところ、仲間と車道を歩き続け、すれ違った時にマイケルがシガリロス(葉巻タバコをシガレットにしたもの)の函を小脇にしていたので、パトカーから電話で本部に連絡していると、いつのまにかマイケルが横に立っていて口論が始まった。で危険を感じた警官ウイルソンDarren Wilsonが拳銃2発を発砲、走り去るマイケルを追って薬莢がカラになるまで10発撃ち、射殺した。<
という経過が明らかになったが、両手を上げる丸腰の少年に背後から12発を放って射殺したとか、マスコミが報道した目撃と称する証言は大方が伝聞によるもので、目撃者を聴取した大審院ではボロが出る連続だった。ウイルソン警官の頬にあった赤あざは、ウイルソンが証言するように殴られたものか、自分で転んだためか判っていない。
マスコミの勇み足で全国的差別ポリス糾弾に発展した。小生は大衆正義漢を疑う。往々にして真相があやふやか、作られたものである。
●オバマなってから増えた黒人暴動
えっ!とそれがしもびっくりしたのだが、黒人暴動はクリントン、ブッシュ時代より増え、公民権を制定し、黒人の社会的参画に力を注いだジョンソンの時代に比べようもなく増えている。オバマが大統領に就任したとき、人種間は融和され、中東は平和にイスラムと西欧の友好促進、アフリカ部族間闘争もなくなるだろう、と世界に希望を持たせ、オバマ自身がやる、世界をチェンジできると馬鹿げた錯覚を信じていた。だが実情は一つのアメリカどころか、アメリカを政治的にも社会的にも両極端に分けてしまったではないか。
米経済が回復、失業率も減ったことは確かだが、専ら米の所有する国際大企業の改善によるもので、庶民の実体経済に変化はない。このあたりアベノミクスにも言える。教育度が低く職にあぶれ犯罪率が高い黒人層を底上げする取り組みが州政府にもオバマ政府にも弱いと言わざるを得ない。オバマのように黒人とポリスの関係改善、司法精度の見直しを訴えても解決にならないとおもうのだが。
なお、FBIが独自に調査中のほか、マイケルの両親、弁護士や支援者が検察官の集めた証言書類を陪審員に提示したプロセスを調査する様セントルイス郡警察に申し立てるそうだが、大審院の決定を覆すのは至難らしい。(了)