安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ヴェニスの奇跡(最終回)
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( 2014年 10月 14日 火曜日


前回(7回):
【リアルトに着いて橋の方に歩き出した。すると奇跡が起こった。群衆の中で突然H夫妻と鉢合わせしたのである。顔と顔が真っ正面に、ウワー、キャーと瞳孔がひらき、歓声が出る。】
のつづき最終回です。

●冥助
ヴェネチアの晩夏は暑さも峠をこえ、水上都市は何処も彼処もごった返している。その広い市内でH夫妻とはぐれたそれがしが、数時間後に正面から鉢合わせ、それも1メートル外れていれば気がつかなかった鉢合わせであった。まず奥さんが気が付き、それがしは辺りを見回しながら歩いていたせいで、正面がおろそかになっていた。Hさんは画題になるよう一景を求めながら歩く習癖で、やはりそれがしと同じく心此所に非ずで不注意者である。

よくぞ会えた。それがしは天を指差し「上の人のお導き」だと喜んだ。Hさんはそうではないなんとかいう「不動明王」のゴリヤクだと言って譲らない。なんでも若い頃この「お不動さん」に願かけして成就して以来、この不動明王をご自分の守り神としているそうそうな。そして自信満々というか「必ず再会できる」と念じて、絶対会えると判っていた。とこう彼の不動明王を力説されると、不真面目なクリスチャンとしては「神の御加護」を言い張る訳にも行かず、「冥助」によることに致しましょうと、つまり再会できたのは目に見えない存在の助けであるということで一致した。

で、メイジョてどんな字ですか、と質されてこちとら字が書けない。メイカイのメイ、メイオウセイのメイと答えて、スマホでチェックした奥さんが、あ、これか「冥利」の冥ですね、と。ま冥利と言えば仏教的でご利益と関連付けられるようでそれがしの意図とはビミョウに違う。ここはそれぞれの 「冥助」に感謝したい。

●一杯飲み屋・バーカロ
夕食は一杯飲み屋というか、仕事帰りにワインを立ち飲み、チケッティと称するつまみ類を食べながら駄弁る地元のサラリーマン向け立ち飲みやがあるから、必ず試されよとそれがしの妹から教えられたそうで、日暮れ近くなったリアルト橋から辺りの横道を散策する。が、どうもそれらしきものはない。一軒立ち飲みではなくてスタンドと座席がある店にチケッティとおぼしき色々なつまみ、軽食が皿に盛られている。立ち飲みやにしては明るく清潔だが、これがチケッティですかと聞くとそうだという。じゃここはバーカロなのか聞くとそうだという。

しかし、やや奇麗すぎる趣で、もう少し探してみようと歩いたがどうも観光客用のレストランやバーばかりで地元の人間とはかんけいなさそうだ。歩くのも疲れたので先の小奇麗なバーカロで食事することにした。テーブルはわれわれだけ。まずビールで「冥助」を祝して乾杯。ワインも進み、チケッティも種々あって、何を食ったか忘れたが、魚介類有り、肉類あり、リンゴを一コ切って呉れるように頼むと、ちゃんと皮、芯を取ってボ−ト型に切り丸く皿に盛って出してくれた。この店は若いお兄さん一人で料理、ウェイター。会計をこなして忙しいのに、とても丁寧である。そしておいしくワインも弾んだ。お勘定になってWhat is thisあまりの安さに驚いた。笑いがこみあげる。これぞバーカロ大正解の店でした。

●追記、フランクフルトのシュテーデル美術館
こうして最後の夜を楽しく過ごし、翌朝早くそれがしはHさんたちを残してフランクフルト経由でベルゲンに帰る。フランクフルトでは乗り継ぎに4時間あったので、空港から地下鉄で20分の中央駅に出て、シュテーデル美術館Sta(aの上に点が2つウムラウト)del Museumへ、ミュージアムとあるが博物館ではなくて、大きな美術館のことです。泰西名画のほか、西洋近代絵画を網羅した大きな美術館。短時間ではざっと一回りしただけでしたが、ノルウェーの作家では、ムンク、J.C.ダールがあった。あれ、マルチン・ルターのいかつい肖像画がこんなところに。フェルメールが一点(Geographer地理学者)、これがウリなんでしょうか恭しく目立つ所に展示されていた。その他、クラナッハ、ボッチエーリ、レムブラント、ドラクロア、フランス印象派の巨匠たちがずらり。目と足が疲れますが名画の印象が心地よい。

●追記2、先回掲載したマルグリットのThe Empire of light II(光の帝国)について:
それがしの画集ではNY近代美術館所蔵となっている。ヴェニス.・グッゲンハイムのはIIが記されている。ということはマグリットはこの繪を2点描いたということになる。画集とパンフレットの「光の帝国」を比べると、ハハハ、ハッキリ雲が違いますね。よく見ると館の前の樹の形がビミョーにことなり、池面に映る館の様子に強弱あり、窓に掛かる外灯の陰の位置が異なるなど違いがあった。もちろんどちらも名画、好きな繪が二つになった。






Pnorama Box制作委員会


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