安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ノーベル文学賞と平和賞
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( 2014年 10月 11日 土曜日


●文学賞、モディアノってだれ?
下馬評に上がっていなかったフランス人に文学賞が決まった。それがしはこのユダヤ系フランス人たる作家を知らない。詠んだことはない。家内の本棚を見ると2冊あったが、北欧ではすくなからず読まれていたのだろうか。英語系の読者はだいたいフランス人作家を読まないので、あまり作家論に取り上げられない。すると日本でも知られていないだろう。

文学賞にはネベスとセラー作家もいるが、読者層のうすい詩人や難解でよまれていない作家もいて、近年の異選考委員はしかつめな高齢者で、娯楽的な文学作品は避けている。ドリス・レッシングのときは亡くなる前にあわてて受賞者に列した感がある。

氏の小説は同工異曲の「自分探し」の物語という。それで『失われたときを求めて』のM.プルーストにくらべられるのだが、出自からわかるようにナチ占領下のフランスに遡って戦後の自身の記憶を不思議な世界に構築するという批評。舞台はフランスの街やそこかしこでフランスを出ない。選考委員会は"for the art of memory with which he has evoked the most ungraspable human destinies and uncovered the life-world of the occupation"__欧州を舞台に限定した大戦とその後の「自分探し」は日本でベストセラーになりえない。それでも和訳が多数あるよし。

●村上春樹を解せない選考委員
さて、村上春樹は賞を逸した。高齢の選考委員には村上小説の手法が「荒唐無稽」に映るのではないか。世界の若者にどれほど人気があろうと、これはもうセンスのちがいというか、現今のナチの記憶にはまる選考委員では望めそうにない。昔々、『ジャングルブック』のキプリングが31歳で貰ったのは、老選考委員でも解る故で、村上文学には今の選考委員が引退して次世代の委員が着任するのを待ちましょう。なに、5−6年で入れ替わります。

●文句なしの平和賞
カイラシュ・サティヤルティKailash SatyarthiとマララさんMalala Yousafzaiの二人の名が当地時間の11時、かっきりに現われたヤグランが発表。委員長は三振が多かったが最後の仕事でホームランを打ちましたね。嫌ヤグランのそれがしは見直しましたぞ。

上位のサティヤルティは非暴力の活動でガンジーに例えられる。児童虐待と児童労働をやめさせるという活動に暴力は似合わないが、インドの女性蔑視文化と児童を使う企業、また吾が子の給料しかあてにできない貧困家庭を相手に妨害に屈せず実績をあげてきた。子供は学校に居るべきなのだ。苦節の活動35年8000人の児童を救ったじっせきがある。とはいえまともに学校に行けない子供が世界に一億いるという。彼に続く多くのサティヤルティが現われてほしいと今日は切に思う。

●卓越したリーダー、ラマラ
17歳は若すぎる、ノーベル平和賞が重荷になるだろう……という考えは間違っている。この女性には世間一般の常識は通じない。当日学校にいたラマラは科学の時間に先生から、とても嬉しいニュースがあると呼び出されて受賞を知ったが、学校の時間はおろそかにできない。放課後、5時半に学校図書館で声明を出すと学校側から発表があり、ロンドンの海外記者らも駆けつける時間があり、なかなかの盛況でした。そして彼女が登壇し、話し始めると会場はしーんと静まり返って、息をのむように聞き入った。

既に女性教育や人道における賞を総なめにしてきたラマラは「並の人間ではない」という比喩が虚ろに響くほどの怪物である。一度話すと、1.52mの小柄な体で15.2mの巨人のようにパワフルな女性。首相になって教育改革をしたいと平素の顔で平素の言葉でてらいなく語れる。

マララ一家はタリバンの殺害予告をうけて現在イギリス(多分永住)に住み、英政府の庇護をうけている。彼女はイギリスのちょっとハイソな学校に通っていて、会見のあった学校図書館が余り立派なのでおどろいた。今の学校で「一所懸命勉強して一番になりたい」というほどだから頭もいいのだろう。成人になった神童は意趣卓逸したリーダーに成長した。(了)






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