安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
ヴェニスの奇跡(連載7)
------------------------------------------
( 2014年 10月 6日 月曜日


●Hさん夫妻を見失う
ヴェネチアで合流して4日目、この日はそれがし最後の観光となった。あいにく、はじめての雨模様で、3人ともレインジャケツでまず水上バスでサンマルコに出て、時間の都合で入らなかったドゥカーレ宮博物館に向かって歩いていると雨が激しくなってきた。あわてて桟橋からの橋を渡って、宮殿横で雨宿り。H夫妻も直ぐ後から来ると、しかしいくら待っても姿が見えず、運河の方に写真かなと動いたのがいけなかったかも。あとはサンマルコ広場から一帯を歩きり、雨宿りしている人ごみをかき分け探した。

まずドゥカーレ宮博物館博の長い長い行列も丹念に見たのだが、ここは歴史的考古博物館とわかって、それならHさんの関心は強くない。かれこら2時間近く探しまわって、もちろんHさんたちも当方を目をさらにして探しているわけだが、もう互いに見つかる可能性はないと踏んだ。ま、ホテルには帰れるだろうから、それがしは前から話していたグッゲンハイム・コッレクションを見ておこうと水上バスで三つ目の対岸に渡る。あとは歩いて15分ぐらいの、この美術館に入る。

●ヴェネチアのグッゲンハイム美術館
このグッゲンハイムが魂消るほどに素晴らしい。それがし、ニューヨークのSolomon GuggenheimMuseumに行ったことはないが、ここは夫人のPeggy Guggennheimが邸宅を建て、気に入った蒐集作品を手放さず個人所蔵していたものを、彼女の没後に邸宅を美術館にして展示するようになった。大邸宅ですな、詳しくはネットで探してくだされ。

それがしは絵描きではないが、戦後のデザイン界の重鎮、師匠筋のデザイン大家(故人)はみなピカソ、クレー、カンディンスキー、ミロ、モンドリアン、レジェ、ポロックなど20世紀前半の画家から学び、模倣したのである。時間つぶしの積もり半々だったが、これら巨匠の作品を一堂に現物で見るという予想外の愉悦を味わった。ほかに、モホリ・ナギー、ダリ、キリコ、マグリット、M.デュシャン、ジャコメッティ、M.エルンスト、モビール彫刻のP.カルダーetc. とまあ、体がゾクゾク足が地に着かない程であります。カメラを忘れたのが返すがえすも残念。

↓画集で好きだったマルグリットのThe Empire of light (光の帝国)を見て、画集ではシルエットの木や森が、入念に描き込まれているのに唸る。

グッゲンンハイムをあとに、再びサンマルコに戻ってHさんよ、通らないかと街路のカフェーに座り、見回すが無駄な気がした。隣のテーブルでコーラを呑んでいたイギリスの老母と娘が、わたしの前を去るとき、椅子を弾いて二人を通しながら声をかけた。「お母さんを大事にね」Iwill, Iwill,とにこやか。「わたし友達とはぐれたのです」Oh, what a sad. と同情してくれる。

●リアルト橋へ...
Hさんの今日の狙いはリアルト橋である。ヴェネチア代表するお馴染みのーケード付き、橋上両側に商店もある太鼓橋である。時間もちょうど良い、いまごろはきっとリアルト橋に向かっていることだろうと、予感ではなく論理的にそうおもった。リアルトの名前を覚えていたのは、英語でリチャード、独語でリヒアルト、スペイン語ならリカルド、北欧ならリッカードである。ありふれた人名だから覚えやすい。で、再び水上バスに乗る。20分はかかっただろうか、リアルトに着いて橋の方に歩き出した。

すると奇跡が起こった。群衆の中で突然H夫妻と鉢合わせしたのである。顔と顔が真っ正面に、ウワー、キャーと瞳孔がひらき、歓声が出る。(続く)










Pnorama Box制作委員会


HOMEへ戻る