日本の頭脳とよぶ科学者を惜しみ、ご冥福をいのります。
●科学の誤謬は科学者の責任か
科学者にも総ての業種の人間とおなじで、無責任なハッタリやも責任感の強い真面目な人も、意地っ張りも柔軟な人もいる。そのなかで自殺する人はきまって責任感の強い真面目な人だ。そう言う人がマスコミにはたかれ、理研側から批判されては立つ瀬が無い。副センター長辞任の願いを拒否されては逃げ道がない。それがしは知らないが、NHKが真相究明の番組で個人攻撃に視聴者の興味をそそったという。よく識者のコメントで言われるように追いつめられ生きる意欲を失った。そういうことだとおもう。
事件の要、STAP論文に不正があったといえ、わざと捏造して大むこうを狙ったわけではない。この件はiPS細胞をつかって心筋移植手術に成功したと詐称した森口尚志やES細胞論文捏造の韓国・黄(ファン)教授のような悪質な行為ではない。
もっとも発表直度に書いたコラムで「あり得ない現象」に疑問を呈したが、発表を急ぐあまり論文のい検証が粗雑になったこと否めない。笹井氏は早々論文取り下げに同意した。科学者としてはその非を認めて謝まり、変らぬ環境で研究を続けられるようにすべきだった。科学論文が間違っていたことは歴史上ありふれたことであって、医薬品の効能試験などは誘導論文が多い。
●理研の検証実験は死刑宣告
自殺の決意までには長い月日がかかる。親しい友人や何があっても味方になる同僚なら自殺の兆候は明らかにわかるはずだが、笹井氏は家族を巻き込まないためか、孤独だった。5通の遺書があったが、理研の研究者が独自に検証するのは良いが、本部が社会的公表を目的に行うのは理研全体の研究者に吉兆の影響がある。STAP検証のケースで「兆」と出るのはみえている。小保方氏が先きの記者会見で「1、2週間でSTAP細胞を作れる。200回作成した」と豪語してから4ヵ月が過ぎているのである。(了)