● バグダッドへ進撃
先日来、ISIL, Islamic State of Iraq and Levant「イラク・レヴァントのイスラム国」とか、ISISというIskamic State of Iraq and Syriaというイスラム過激派がイラク政府を打ち破りそうな勢いだ。2-3日前に北部暴れ出したと思ったら、たちまちモスルを占領しちゃいましたな。石油が欲しいだけではなかった。破竹の進撃はとうとうサッダムの出身地でスンニの牙城でもあるティクリートを掌握してしまった。油田地帯は大方過激派の手に落ちたのだが、まともな戦争してません。スンニはシアーの現イラク政府が嫌いですから、ISILに同情する面もある。
●政府軍はお仕着せ、士気がない
マリキが送った政府軍は戦わずして逃げたも同然、逐電したヤツもいるそうですから、バグダッドも危ない。冗談じゃなく真実味あるたった一週間でイラク政府を倒す武装勢力はすさまじい。オバマにはとてもできない芸当ですね。ビンラデンを殺害したとき、オバマはあるカイダは壊滅、彼らはオン・ザ・ラン(逃げているところ)。と自信たっぷりな演説しておいて、そのあとイラクのテロ激化はますばかりではないか。そしていまISISというシリアで力を付けた国籍雑多なイスラム戦士がイラクに入ってきたわけだ。
すでに50万人以上が避難、どこへいくかというと、とりあえずバグダッドへ……になるわけで、難民を助けてISILと戦うなんてのはマリキ政府に容易くできることではない。とはいえ政府軍はアメリカ仕込みで武器も優れているのになぜ危ういかというと、士気の問題でしょうな。米軍が直接退治していた時は、過激派を寄せ付けない戦いぶりだったが、米兵に教えられ、給料もらうだけでやる気のないイラク兵と、命がけでテロ攻撃を仕掛ける人間とは士気がちがう。いうなれば逃げ姿勢の幕藩さむらいが百姓のにわか足軽に負けるようなもの。
●天下を分けたレヴァントと桶狭間
だから彼らは「レパントの戦い」の地名を組織名につけたのだ。あれはイスラムが西欧に負けた天下分け目だったわけで、その敵討ちのつもりなのだろう。イスラムというのは、ナイジェリアのボコ・ハラムやチモールのなんとかまで世界に広く分布していて、だからそれがしはイスラム圏には旅行しない、したことがない。トルコは二度行ったがあの国はムスリムでも緩やかで、普通に立ち回って問題ないからにすぎないので付き合いで行っただけだ。
それにしてもあれほどイスラムと外交できる期待を持たせたオバマが、エジプトを失い、イラク、アフガニスタンでは民主選挙の果反米政権ばかりになってしまった。反米で支援きんだけは分捕る彼らから見れば、親米で米軍援助に毟り取られる日本はバカなんであろうな。
ところでレヴァントの海戦を描いたものすごい緻密な大作をラルースのPainters Dictionaryを本屋で立ち見して感心して買った。だが分厚く、あの絵の作者を覚えていないので索が役に立たない。見つけたら次回コラムに載せます。(了)