●E3+3 vs Iran, 6ヵ月の暫定措置
イラン大統領がアフマディネジャドの在任8年から、親欧米のロウハニ に代ってから、イラン核協議が 始まった。E3+3(EU諸国を代表して英独仏の3国と米露中の計六カ国))が、イラン外相・ザリフを相手に2回目のジュネーブ協議で24日合意した。
合意内容は:
_イランは濃度5%超の高濃縮ウランの製造を停止し、現在保有する20%の高濃縮ウランは濃度を下げて6カ月以内にゼロにする。
_核兵器に使用されるアクラの重水炉建設を凍結し、主要核関連施設へのIAEA査察を全面的に受け入れる。
見返りとして一分制裁解除:
_米欧はイランの石油輸出意による在外金融資産のうち42億ドルの凍結を解除
_15億ドル相当する金などの貴金属や自動車関連産業の禁輸を一部緩和する。
●3段階の措置を経て総括的合意へ
この合意は3段階の合意過程のなかの「第1段階の措置」であって、イランが核兵器への転換と開発をキッパリ止めたという決定的な合意ではない。実に玉虫色で、それがしもいくら説明されてもわからんことは、濃縮イランの継続をめぐるイランと西側の合意解釈がまるで逆なこと。
冷静に考えて、イスラエルのナタにエフ首相が合意後間髪をいれず、「歴史的な過ちHistoric Mistake」と非難したように、イランの核開発を禁止する項目がこの合意にはないのである。ま、この合意でイスラエルは国際的にイランの核施設を攻撃が不可能になったのだから、さもありなん。
ケリー米国務長官は「合意にイランが濃縮権利があるとは書いていない」とそっけない。しかし、前大統領のときに協議が訣別した原因は、この濃縮イランの禁止に合意できなかったからである。以前にそれがしはロウハニ大統領にかわったとき、親欧米派といえどもイランの核政策に変化はないと書いた。
それでもE3+3 がプリンシプルを曲げて「第一段階の措置」と銘打って合意したのは、米露主導でフランスを除くEUが追随した結果である。特にEU3+3の代表交渉にたったCatherine Ashoton カトリーヌ・アシュトンが「合意」にウラン濃縮問題を下げ、IAEAの査察を確約することで合意にこぎ着けたためである。
ロウハニ大統領は、TV演説で嬉々滔々と『合意は濃縮の権利を保持したイランの勝利である』と自賛するばかり。実際は向こう六ヵ月、IAEA査察やテクニカルな問題を討議し包括的合意に達しなければならないことになっている。いわば問題を六ヵ月先送りしただけで、オバマは六ヵ月後の包括的合意をどう合意するか、何を考えているのか知りませんが、最終合意は至難であろうとそれがしは思う。ロウハニをぬか喜びに終らせるとあとがないですからね。
●その他
なお、NTP条約にはウラン濃縮にたいする禁止はふくまれず、原子力発電の平和利用に用いる濃縮度なら
よいとされ、日本では青森県の六カ所村にウラン濃縮工場がある。
中国の王毅外相はジュネーブでは全く影が薄い。一言言いたい。駐日大使時代には歴史問題で反日批判を繰り返して全国を講演、それを有難く拝聴した親中派やメディアの状況が本国で評価され外相に抜擢された王毅は、所詮創造的外交官ではない。