●物乞い今昔
欧州を旅行した人で、路上物乞いを見なかった人は居ないだろう。日本の大都市には路上生活者いるが、物乞いは殆どいなくなった。日本では基本的に禁止されているうえ、おまわりさんの職務質問でストップされるからだろう。
もちろん昔は「右や左の旦那さま」と泣き口上で小銭をせびる物乞いや、薦被り(こもかぶり)、「巡礼にご報謝」と」鈴を鳴らして玄関口に立つ巡礼姿の少女、ワラジ脚絆に編み笠を被った旅の托鉢僧がいた。また、若者がが「お伊勢参り」に連れ立って出かけるときは、道中食べ物を托鉢しながら歩いたという。それがしは子供の頃道端で筵に座っている乞食を「オコモさん」と呼び、お布施をするまで家の前から離れない虚無僧(こむそう)がこわかったのを覚えている。また戦後も60年代までお祭りに白装束の傷痍軍人が見られた。これなんかは組織的で軽犯罪法が適用され、消滅したものの、やり方を変えて戸別訪問、金銭をたかる連中がいると聞いた。
●物乞いが世界で最も少ない国-日本
念のため、仏僧の修行として托鉢することは認可をうけて合法である。この場合も駅前とかに立つのであり、戸別訪問はしない。貧しい国なら物乞いが当たり前にいる。インドには偏在、中国でも市街を一人であるけば子供の物乞いがまつわりつく。アメリカは歴史的に様々な乞食が存在し、存在する国である。
世界ひろしといえど、某(それがし)は日本が島国の利点として一番乞食のいない国じゃわい、と実感するのである。
●ノルウェーの物乞い事情
昨日、我家にみすぼらしい格好の中年がベルを鳴らした。家内が出てみると胸に『私はxxx人です。仕事が無く生活に困っています。お恵みを』とノルウェー語でマジック書きした板紙を胸にニコニコしている。NOで押し返したが、こんな郊外の行き止まり道まで物乞いがやってくるとは・・。学生と名乗る英語を話す若いのが、絵や装飾品を売りに来るのが常であった。それがしは売り物を絶対見ないで断る。押し売りは法律で禁止されているのだ。
●ルーマニアの出稼ぎ物乞いたち
都市部では、たとえば首都オスロの通りは角々紙コップを前に物乞いが座っている。なかには幼児連れや、うら若い女性もいる。夏シーズンは400人ぐらいの外国人物乞いがいて、そのうち100人がオスロのセントラルに密集しているのである。国籍は西ルーマニアが最多、ブルガリアの2国である。この2国は底なしの貧しい国だが、EUの新メンバーであり、自由にEU諸国を行き交うことができる。ノルウェーへはEU加盟国ではないがシェンゲン協定という人的移動に関してEU と同等になっているのでやはり入国審査なしで入って来れるから。お手上げだ。しかも街頭で物乞いを禁止する法律がないのである。押し売りは迷惑故に禁止しているが、道路端で黙って座っているだけの乞食は他人に迷惑をかけないからなのか。
彼らの一日の稼ぎは平均3000円から5000円くらい、南欧の倍取りだそうだ。救世軍の建物でシャワー使い、コーヒーとスープを貰う。そして住む場所が問題で、キャンピングカーの連中は駐車場を占拠し、車のない者は郊外の森にテント村を作る。トイレなどないので周りに排泄物が広がり、非衛生の極みである。で、市の衛生保健課が衛生法違反で取り締まろうとしているが、とりあえず簡易トイレを市が設置することになった。ま、保守党政権にかわって厳しくしてくれるだろう。(了)