●相継ぐ類似事故
同じような事故が立て続けにおこった。ロス空港のアシアナ航空着陸事故につづく米サウスウェスト航空の着陸事故、パリ郊外フランス国鉄の脱線事故につづいて、多数の犠牲者を出したスペインの高速列車脱線の惨事をみる。菅・鳩山とぼやいている方が幸せなのかも。
●監視カメラの威力
スペイン高速鉄道の脱線事故の瞬間をバッチリ捉えた監視カメラの映像が何度も放映された。TVのない家庭はまずない当今、数十億の人々がこの映像を見ただろう。そして「スピードの出し過ぎ」に因るとジャッジしたと想像する。日本新幹線の運転士さんたちは、この脱線事故にどのような感慨をもっただろう。
●尼崎とサンチャゴ
それがしには、尼崎駅の近くで起こったJR西日本・福知山線の脱線事故が去来した。あのときは運転車両から真っ先にカーブを飛び出し高架横のビルに衝突する前代未聞の事故である。列車の遅れを取り戻そうとした若い20代前半の運転士の粗雑なスピード運転が原因である。カーブを曲がりきれない速度で事故を起こす自動車と同根の人為ミスとおもう。スペイン北西部、サンチャゴ(Santiago de Compostela_の脱線事故は、やはりカーブでのスピードの出し過ぎ、時間は5分おくれであったがこれしきスペインでは問題にならない。
●ベテランの過信
運転士は50代で運転歴30年のベテランだった。ベテラン必ずしも規則順守で信頼できるとは限らない。高速運転車両はロングノーズの流線型、おそらく箱形の客車両より安定性がたかいのであろう、2両目から脱線がはじまっている。運転車両は引っ張られて横転、側壁に衝突しなかったので,軽傷、事情聴取がはじまり、正式に捜査対象になった。
80キロ制限のカーブ場所を、190キロで突っ走るとは、スピード感覚がマヒしているとしかおもえない。脱線の直前に副運転士がおどろいて、スピードが190キロある旨注意した録音があるとの噂が巡った。ベテラン運転士は高速列車に携わってまだ1年目、速い列車が好きだったという。この高速列車はまだ導入されて2年いないという最新型、前日に定期検査を終えたばかりだった。車体に問題がないとすればなにか。
●高速鉄道にカーブ?
スペインは欧州有数の高速列車網を自慢していて、速くて安全で知られている。それにしてはなぜカーブが高速鉄道にあるのか、地方には従来の線路をそのまま使用しているところがあるという。それじゃ、200キロ以上で走らせていた15両編成の列車を80キロ落とすのは、急には出来ない操作であろう。制限80キロカーブの位置をど忘れしていたのかな。
●ふたつの自動制御システムが混合
幹線では欧州一律にETCS (European Train Control Sysytem,欧州列車制御システム)が適用されており、自動的に警報と強制ブレーキが作動するようになっている。だがしかしである、スペインには従来のASFAという制御装置を使う地区があり、脱線したサンチャゴ地区はETCSからASFAにシステムが切り替わる。運転士に負担をかけたことは否めない。ASFAは線路沿いに点々と配置されたビーコンと運転席の受信機によって、スピードを判断して警報する、かなり旧式のシステムである。
(了)
書き忘れ:事故現場実況映像に「これは事故なのかテロなのか、いったいなんだ」と叫ぶ男の声があった。マドリードでおこった列車連続爆破テロ事件、通勤客を襲ったあのイメージが生々しい。スペインでは9.11 よりMadrid 3.11が重い。