安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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モルシ、お前もか
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( 2013年 7月 4日 木曜日


檻のなかのムバラクが呟きました「モルシ、お前もか」

●モルシ大統領を解任した軍評議会

エジプト国軍はモルシ政府に猶予した限定48時間が過ぎると、予定通り盛るし大統領を拘束軟禁状態におき、幹部の国外逃亡の措置を取った。ムスリム同胞団の広報官はメディアのモルシは何処に居るかとの質問にのらりくらり、問いつめられて「モルシ大統領とは連絡が取れない」と苦渋の応答。

モルシは最期のTV放送で自己の正統性を訴える長過ぎる演説、議会の新選挙を約束したが、too late, too little. 反政府派の怒りを増幅した。軍介入は決定的なった。

●軟らかなクーデター?

この軍による大統領解任はいかにもクーデターには違いないが、クーデターとは現行政権を武力で奪取したグループがの政権に変ることだ。その意味ではエジプト軍による今回の介入は、軍事政権を立てるのではなく、民間暫定政府をたちあげ、最高憲法裁判所長官を暫定政府の首相に任命、大統領選挙までの実務者内閣をたてることにある。軍事クーデターのなかでは良心的なのだろう。

●米軍の影響

エジプトの軍隊は、ロシアが武器や組織作りに関わってきた。近年アラブの軍隊は兵器を米国製や英仏伊など欧州製に切り替えはじめ、中国製も紛れ込んだが、ムバラクに引導を渡した軍の幹部は米軍で修行した者が最も多い。今回は、兵器も軍のトップもすっかりアメリカ仕込みになっているので、米国防省とエジプト軍トップは臥薪嘗胆の仲である。とはいえ困ったことをしてくれたものだ。

ということで、アメリカはこのクーデターを了承しておりました。そうするとすべての西側も「民主主義」を無視した軍介入を非難しないのである。安全のため米大使館員の帰国を促しているが、エジプト軍は米人を徹底して衛る所存だ。

●西側の期待と意思疎通に失敗したモルシ

モルシの失敗は新憲法で軍の国政影響力を排除し、トップの首(タン・ウイ将軍)をすげ替えたため、軍の反感を買ったこともあるが、それ以上の失敗は、西側との意思疎通に欠けたことである。

●エジプトで唯一の命令系統組織力は軍

さて、ムスリム同胞団は勢力を失ったが、人口の半数近くはまだモルシ派である。警察はモルシ支持のデモ隊とタヒール広場の反モルシ群衆に向かってゆくのを阻止するため、見張っていた。エジプトでは、組織力と機動力を持つ唯一の機関が軍隊である。エジプトでは大統領に反対してもよいが、軍に反抗しては勝ち目が無い。

1年前から振り出しに戻ったわけだが、前回もムバラクの逃亡から新大統領選出まで半年かかった。今回は前回よりも前途多難、暫定政府が議会と大統領選挙の機能をスムースに果たす保障はない。

ところで中国ではエジプト大群衆のデモの様子は国民に知られたくない。報道にデモの映像はない。







Pnorama Box制作委員会


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