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エジプト、腹いせの群集心理
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( 2013年 7月 3日 水曜日 )
●政情不安のエジプトカイロのタヒール広場にモルシMohammed Morsi大統領の退陣を要求したデモが10日ほど前に始まった時、「市民戦争に発展する兆しがある」と当地のTVで解説したエジプト専門家がいた。それがしはホンマかいなと聞き流していたのであるが、事態はまさにその通りに拡大した。だいたいあの広場では足らずに四方への道を埋めた群衆のマッスに他打驚くばかり。これで国政が揺るがない筈は無い。 一年前にムバラク政権を倒した群衆との違いは、デモの主体が前回のような若者(大学出で職がない若者)にかぎらず、おかみさんやおじさんの一般市民が大挙して集まっていることだ。 ●モルシ/ムスリム同胞団は経済がわからないモルシの即時退陣を求める理由は、この一年、生活は苦しくなるばかりで職がない。それどころか、インフレによる食料品30%高、失業率は12%に、都市部カイロやアレキサンドリアで100万人が失業したという。ならばムバラク独裁時代の方がよかったかというと、それはない。なんでも言えて政治活動ができて民主的な選挙ができる「自由」の空気は一度吸ったらもどれません。 さて、デモ隊がムスリム同胞団の本部に火炎瓶を投げ、建物に侵入、机をひっくり返し、窓を割り、多くの部屋を破壊した狼藉を警察は阻止しなかった。建物外部の破壊が始まっても治安警察は手出しをしない。今回は放水車、催涙ガス弾、ゴム弾を一切使っていない。どういうことだ。 ●文民統制の制度はできたがあきらかにモルシ大統領に威光がないのである。就任時の支持率72%はいま25%である。過半数を獲得した与党のムスリム同胞団は、いわば政治のしろうと団体にすぎない。中東では反米主義から、民主化に移行するとイスラム回帰の気持ちが強くなるらしい。それでチュニジア、リビア、エジプトなど「アラブの春」の革命国でイスラム原理派が勃興し、民主化が阻まれている。 ●軍掌握に失敗したモルシモルシは新憲法を制定し、エジプト軍が独立して行動がおこせる「軍事評議会」の制度が、文民統制にそぐわないため(それはそうだ)軍出身の評議会議長を罷免した。思い切った事をするなぁ、とそのときおもっていたが結局軍への財政支援にもかかわらず、軍を掌握できなかったようだ。 ●神さまの役割を己惚れる将軍たち軍の将軍殿が48時間以内に秩序回復できなければ介入、ロードマップを提示するとしゃしゃり出た。今日3日に期限切れだが、そんな短期間にモルシと反政府デモが解決できますかいな。まる神託のようにもの申すハチャメチャな軍人脳みそだ。 デモの市民は軍が味方してくれると喜んでいる。前回同様にクーデターはしなくて、大統領選挙と議会選挙やり直しの日程をつくり、政権の立て直しを模索することにある。加えて新憲法の破棄を要求するとの報道がある。常識的には軍は内政に関与すべきでないのだが。 ●腹いせの群集心理民意でえらばれた大統領を、市民が力ずくで引き下ろすのはみずから民主主義を破壊する行為である。それがしは反体制派にクミしない。尤もモルシを支持する訳ではないけれど、不満があるなら野党なりデモ市民が政策を考えて提言するのが順序だろう。いきなり数百万デモで辞任させても、腹いせで経済はよくならない。(了) 余談:最高指揮権が、自衛隊ですが首相に在る文民統制の日本は素晴らしいのです。中国では統帥権を有する軍事委員会主席は必ずしも国家主席と限らないので、三権(共産党総書記人民解放軍軍事委員会主席および国家主席)獲得に躍起となる。韓国では最近まで有事の韓国軍識見が駐韓米軍司令官にあった。
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