●100万人のデモ
全国で100万人の主に中流市民がデモるとは、想像がつかない規模だ。日系人の多いサンパウロやカーニバルのリオ・デジャネイロの二大都市がデモの、それに首都ブラジリアのデモなんて公務員が出てるのかな。やはり高齢者社会ではない国中心、カーニバルのお国柄だけにエネルギッシュだ。
コンフェデ・サッカーでさえ止められない、サーカー王国ブラジルで、イタリアvsジャパンの評判よりデモが大事といえば、遊びではないわな。トルコより危機感がある。たかが市バス料金の値上げきっかけで、百万人とは、よほど政府に不満があるのだろう。サンパウロ市は値上げ中止を発表したが、もはや焼け石に水である。
でもの市民がもつプラカードはワールドサッカー競技場より、教育・医療にマネーを使え!が一番多い。インフレもある。中央銀行はレアルが暴落とまでゆかないが通貨介入をやり出した。
●影がうすくなった女性大統領ルセフ
ブラジル初の女性大統領ディルマ・ルセフ(Dilma Rouseff)は、このところ人前に出ていない。政治家として落第だ。橋下氏の長所は人前に出て喋ることだ。「口は禍のもと」で棄てられても、何も言わない政治家より務めに忠実だ。ディルマさんは慌てて天皇拝謁も予定された日本訪問をキャンセルした。醜態である。
●ルーラの遺産
ブラジルといえばルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ (Luiz Inacio Lula da Silva),通称ルーラ大統領が財政破綻したブラジルを建て直し、二期務めたが常に70%の支持率があって、貧困層を撲滅した大政治家であった。この人は中卒で鉱山労働者から労組委員長になったサヨクだが、インフレ退治にも成功した。国家再建に成功したルーラ氏は、世界的には阿部氏より遥かに尊敬されている。おかげでブラジルはワールドサッカーを開催し、夏・冬のオリンピック招致にも成功したのである。
で、このルーラの後押しで大統領になったルセフさん、始まりはよかったのだが、パっとしないうちに足下でインフレ再燃、食料品が高騰した。2016年リオ・オリンピックが重荷になった。食い物のウラミで転覆した政府、政治家は歴史上数知れない。以て教訓とすべし。
余談:ポルトガル皇太子が母国から独立したブラジルは、王国憲法を制定して以来8回新憲法を改変している。ま、独裁政権のたびに新憲法を発布したり、変り過ぎも困るが、わが国の如く占領下憲法を永劫に温存するのも面妖である。(了)