●ビザーレ
クリーブランド市でおきた衝撃的な3女性誘監禁事件をなんと言い表せばよいのか、適切な言葉がみいだせないとき、しばしばBIZARRE=猟奇と形容される。まさしく禍々(まがまが)しく不気味な事件である。しかし猟奇といえば戦後のカストリ雑誌を呼び覚ますのか、邦字紙にはあまり使われていないようで残念。
十年ひとむかし、と言われる。10年間も暴力で脅され、鍵だらけの一件の家の中に閉じ込められ、反抗すれば鎖で繋がれたであろう。助けの声を聞いた隣人が,蹴り破ったドアから幼児を抱いたアマンダさんが這い出したという。警察が踏み込んで残る二人とアマンダさんの6歳になる女児を助けだした。BIZARREだ。
●人質心理
誘拐者の家の住人A.カストロ(32)が3人の若い女性を監禁して玩んだ。何度も流産させたであろう。女性たちは誘拐されてから学校へ行っていない。社会から隔絶された監禁生活では、たとえTVラジオがあっても普通の神経は働かない。自発意志を殺がれた人質心理といわれる。
救出され、家族のもとに還った被害者が心の傷を癒え、新しい人生を掴みとることができますよう、静かに邪魔しなでおきたい。
●階級差のある米住宅地
さて、事件の家の概要写真を見て、また空中写真から判断するとどにでもある東部の住宅街のようだが、注意してみるとかなりひどい区域である。中流が逃げ出したあとにできた地区の様相だ。近所には窓が割れた空き家が多く、手入れの行き届いた家はみあたらない。焼きたてのケーキを持ってお隣さんとキッチンで一緒に食べるなんてことはしない街路である。
高級住宅街なら、有力市民の要望にこたえて警察がパトロールするが、中流以下のこの地区に警官が行くのはレイプの通報があった時ぐらいという。事件後、近所のいろいろな人が口々に、妙な音を聞いたと警察に通報したそうだが、警察は記録がないと言う。一度は通報で事件の家を訪問したが、中に入らずじまいである。
●犯人はもちろん性格に問題がある
事件の家の住人は元スクールバスの運転手、素行が悪いのでクビになった50代の瘋癲野郎。離婚して一人住まいである。息子はたまに訪ねてくるらしいが、娘は服役中という。逮捕されたカステロ兄弟二人は事件への関与が認められなかった由。それ以上はいまのところ警察が明かさない。それでよいとおもう。
過去、オーストリアで「恐怖の家」事件、ドイツでは監禁者をコントロールするまでしたたかに成長した被害女性の事件があった。日本では北九州市監禁殺人事件が耳新しい。いずれも禍々しく不気味な猟奇事件である。(了)