安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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当地の救急医療機関について
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( 2013年 3月 26日 火曜日


●零下の散歩で中耳炎に
来月5日まで、オスロ滞在が長引いている。孫のおもりなんツウのは自分の時間を自分で融通して決められない。娘と家内にアレセイ。コレテセイと命令され、「そうじゃないヨ、何度言ってもわからんのか」とドヤされる。お爺ちゃんと呼ばれて、自らはのほほんと従容として動いてはいるが、 屈辱的な毎日だことよのう。

20日過ぎた日の夜、突然両耳がズキン・ズキンと痛み出した。中耳炎だ。小学生の時以来、中耳炎とはご無沙汰だったが、朝夕零下10度前後の犬の散歩で冷えたのだろうか。スキー帽を持って来なかったので、ダウンのフードを被っていたのであるが、紐で留めていなかったので、たしかに冷たかった。それが原因だろう。

痛み止めが効いて痛みは消えたが聴こえにくい。自分の声が頭にエコーして不快、ペニシリン使わなきゃ直らないから日曜日に救急へいった。昨年 オスロでの滞在中、通風の激痛に襲われて行ったことのある、この地区の救急医務所である。地区の人でも家庭医に連絡してアポに一週間待つより、すぐに診てもらえる救急医務所へ直接行くことになる。これは傷害事件や交通事故によって救急車が出動し、最寄りの救急病院搬送するのではなく、夜間と休日に当番医が詰めている自治体の医療機関である。大きい都市部では各区ごとに設けられ、医師数名のほか事務や雑役に20人くらい働いている。緊急歯科は別の場所にあることが多い。

●当地の緊急医務の有り様
既に20人ぐらい、広くゆったりした待ち合いで三々五々座っていた。付き添いも含めてだから多くはないが、1時間以上はかかるだろう。幼児や、緊急には順番外で直ぐ診てもらえるが、それは受付で判断される。
受付番号紙片を自動機で取り出して、窓口へ。ここでは看護婦が応対し、 症状の概要を聴き取り、それを医師チームに報告する役目である。そのとき指から一滴の地を採取してその場で検査するのがルーチンになっているのだが、AIDSほかの検査でもあるのだろう。

●国民番号制の便利さ
保険証は持ってなくとも、生年月日と名前だけでどこに住む何者かが判る。国民番号制度の便利さだ。税の閲覧、申告(収入、資産、税額etc)から銀行の預金引き出し、面倒な手続きは11桁の番号さえあれば、ネットで済ませる。昨今はスマホでも可能になった。 これほど便利で手間ヒマを省いて、しかも安全機能に信頼がおけるシステムがあろうか。電気代、市役所からの知らせ、公共や企業の通知や書類、仕事の打ち合わせもネットだ。何処に居ても旅行中でも不便を感じることはない。郵便手紙をくれる湯友達にはわるいが、それもごく稀である。なぜ日本のような近代国家の人々が 国民番号制に不信感を持つのか、カード詐欺や、番号詐欺のメールなど、本人が気をつけて慾を起こさなければ引っかかることはない。

● 音声言語学の天才か、看護婦さん
救急医務所の受付にはなしを戻して、やつがれの日本名は一度言っても復唱出来ずスペルがわかってもらえない。いつもならアルファベットを順に言い直したり、紙に書くことになるので、お座なりに告げると、さっと入力して、わが住所を○○ですね、とお見事。この看護婦さんはデキル。「音で名前を効いただけでmasaoki adachiと理解したノルウェー人はあなたが初めて、おどろきましたな」と申したら、 一笑いしてありがとうですって。とにかくこれほど勘のいい人は珍しく仰天した。音声言語学を専攻すればよかったのに。

そうやってまた待ち合いで待つ。待つ間は持参のソニータブレットで キンドルからダウンローした古典(R.ハーン)を読む。古典には無料が多いので年金生活にうってつけである。また、病院や、交通機関の待合所では誰で接続可能なWIFIがある

●増える外国人医師、看護婦
さて数人の名前が呼ばれて、診察室の前でしばらく待つことになる。診察室は6−7室あっただろうか患者が出てくるたびに、その部屋に次の 患者が呼ばれるのでどの医師にあたるか前もって判らない。また此所へ詰める時間医師は常勤の医療機関から順繰りに出向する医師で、常勤は医務長ひとりぐらいである。私が呼ばれた医師は中東系の外国人、外国人医師が急速に増えていて、ベルゲンでの私の医師は中国人である。外国人医師は当地の医科大学で学んで資格をとった医師もいるが、本国で医師であった者が、当地の資格試験(ノルウェー語を含む)をパスした者である。医師不足の現状から医師は無制限に移民が許可され、それはノルウェーにとって嬉しいことだが、国外に出る医師の本国では由々しい問題であろう。

ノルウェーでも医師の養成は充分なのだが、社会福祉国家にあっては高額所得者としての医師に限度があり、儲けの良いアメリカやイギリスの高級病院に出て行くものが多い。個人の権利に属することだ。無料で長い医学教育を施して国を出てゆく医者を止める手だてはない。のである。さらに長い夏休みや、新しい医療方法等を学ぶさい再教育に実務から離れるものがいる。この場合は、その期間を埋める代りの医師を医療関係に特化した人材派遣会社に一任することになる。この場合は期限付きの代行だから当地医師の資格は不要、東欧とバルト3国の出稼ぎ医師がほとんどである。英語かドイツ語ができるだけでは地方の自治体など、病人と意思疎通がママならず問題になるニュースがよくある。 脳外科や心臓外科など高度な外科手術 が要求される外科医はさすがに、人材派遣企業を通さずやり繰りしているようで安心した。

最近ドイツではフィリピンの看護婦が正式に認められたそうで、そのうちタイやフィリピンの看護婦さんの姿が欧州で普通になるだろう。

●処方箋の薬代は安い
私の中耳炎は、予定どおり抗生物質を十日分もらってただいま意気軒昂。まだ服用して初日だが腫れが引いたようにおもう。診察は5分、料金は直接医師に払って3500円程度、薬の処方箋を書いてもらって薬局に行くと薬代千円と格安になる。医者の処方箋薬代がある一定金額をオーバーするとあとはいくら買っても無料になる。アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤はドラッグストでも自由に買えるが、医師の処方箋があればウンと安くなる。ま、これは日本でも同じだろう。

●診察代はタダではない
日本では北欧の医療は一切無料と勘違いしている人が多いようだが、病院に入院と決まれば全額無料、果物やジュース等お見舞いに来る人も自由に取ればよい。しかし各人を担当する開業医(多くは各自治体の医師センターに医務所を持つ)にまず診てもらい、薬を処方してもらう。もし、専門医の診断が必要なら担当医が紹介し、手術・入院治療が必要となれば担当医から病院に手続きが取られる。したがって 初診は何割かを支払うことになる。私のように年に1ム2回しか医者に行かない健康人は年に1万円とかからない。問題は歯だ。成人の歯科治療は、病因による以外保健が適応されないシステムの歯医者だ。

おや、長文になってしまってというな、これが病閑というのだな。(了)






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