●与那国島民と人類学
30年ほど前のこと、日本最西端にある与那国島に住んでいたノルウェーの人類学者と知り合った。 日本古来の慣習、文化が損なわれずに残っている所は与那国、特に島の南部である、といのが世界の人類学者の常識、定説であったらしく、家族構成、建築様式、人が生まれてから死ぬまで節目節目に行われる島の儀式、家の什器やから墓の作り方など、体系的に明かす研究だが、それで今の日本人の思考・行動パターンが解明できる。そんな雲を掴むような話をきいたことがある。台湾と目と鼻のさきにある地理状況にも拘わらず、この島は日本人の島であったため、住民は頑なまでに古来の風習を護ってきた という。
そのとき私が受けた仕事は、1:2500の地図と、地図作製用に撮影された垂直ステレオ写真をもとに、よくまあみな同じ形をした家ばかり一軒一軒描いて島全体の鳥瞰図を つくることであった。当時も滑走路はあった。農地、草地(牧場)もあるが、殆どの住民は漁業であり、風が強くて海岸丘陵は地肌の不毛地帯や、草地や雑木林など、 、開発されていない亜熱帯の自然が豊かで、あいた土地はいくらでもある島である。
島民はどこの家でも鍵をかけない、とは聞いたが、金銭にウルサイとは聞かなかった。いまではホテルもある観光地、ダイビングが人気というから、もはや古来の風習や人情を島民は喪失したであろう。
●日本最西防衛の空白地帯
与那国島への陸上自衛隊「沿岸監視部隊」も配備計画が、町側が土地売却から賃貸に交渉をねじ曲げ、30ヘクタールの土地に「迷惑料」として10億円を要求、交渉が頓挫した。
自衛隊が基地を作るから土地を回あげるなどとむりやり入り込んできたのではない。与那国経済与那国町議会が2008年に陸自の誘致を決議、ときの防衛大臣に陳情したのである。 町長が代っても誘致するのに「迷惑料」10億とは 滅法な。通常地価の10倍吹っかけた。
沖縄にいた遅日ベテランの施政官が、基地の反対闘争で住民が土地代金をつり上げている、露骨にいえば「ゴネ得」を口にして沖縄を侮辱した廉で罷免されたことがあった。よくあること、公人が公言するのは禁物だが、私人は声をあげましょう。
自衛隊が駐屯すると、中国に睨まれて平和な島が危険に曝される、というのが反対住民の意見だ。まことに非現実的で、調子のよい「国境交流特区」を標榜するひとたちである。キミ何をか況や。
●国境の町民800人が全国を危険に曝す結果に
中国の戦艦が接近し、中国潜水艦は与那国の東を通って自由に太平洋に出て行く。監視レーダーは絶対必要であり、与那国なら自衛隊が監視基地を作っても非難は弱い。尖閣に海事なり、陸自が常駐するなら中国は何が何でも阻止する戦略にでるが、与那国は中国がグーの音も出ない日本なのだから、この要諦たる島に監視レーダーがないことがおかしい。国境の町、与那国町島民1600人の 約半数の反対派が、オールジャパンの命運を決めるようなことがあってよいだろうか。(了)