●ベルスコーニは誤謬を認めない
ベルスコーニ爺さんが未だ政治力衰えない。保守老人が爺さんを推すのはもっともだが、あの国では女性スキャンダルが命取りにならない。投票日はかなりの地方で冷たい雨が降り、緊縮財政で年金が減った瘋癲老人たちは投票状へいかなかった。にもかかわらず、上院でベルサーニの率いる中道左派連合が過半数を割ってしまう結果を作った。もし全国的に晴れの天気だったら、下院でもどうなったことか。
しかし、イタリア経済危機を招いた張本人はベルスコーニ、それで首相を退陣したのではないか。どうにもならなくて、次期首相をEUキャリアノエコノミスト、モンティを三顧の礼で首相に招聘し、モンティ内閣はおもいきった緊縮財政を打ち出した。初めは「これでイタリアは助かる」と、イタリア人は有頂天になり、なによりEUとメラケルがよろこんだ。
●のど元過ぎれば
でも、のど元過ぎれば熱さを忘れる。この比喩は一寸違うようだが、まあいい、緊縮財政は福祉に慣れた国民にはツライ。緊張は古今東西、長く続かないものだ。モンティの人気は地に落ち、贅肉落としの緊縮政策が動かなくなった。元の木阿弥である。それでモンティは辞任に追い込まれた、この国民の不満とイライラ、「メラケルめツベコベ言うな」に便乗して、爺さんはモンティさん支援を止めちゃった。
ただ止めたのじゃなく、新税や福祉カッとなど、モンティの政策を全部ひっくり返すという。選挙ではメラケル非難とお金のバラまき政策、イタリア式「甘い生活」ではないか。それで勝つのだから、ベルスコーニもイタリア人も以外ようわからんわ。
村山富市首相が初めてG8に出席し、皆に無視されちゃったけれど、気さくに話しかけてくれたのが、おなじ初出席のベルスコーニだった。以来ベルスコーニは起き上がり小法師のように首相に返り咲き、9回サミットに出ている怪物だ。怪物なんてもう金輪際ゴメンだよ。
●「五つ星」ムーブメント
もう一人、この選挙をかき回したのが「五つ星運動」、その主導者であるジュゼッペ・グリッロ,通称ベッペである。地方議会で2年前から力をつけ、国会議員の25%を一気に制した.橋下大阪市長も真っ青の勢いだ。選挙運動らしい運動もせず、ネットEU脱退、金権政治打破を訴える。政治をネタにするコメディアンだが、単なるぼやき漫才ではない。要するに既成政党のやり方に反対し、政治素人の寄り合い無党派である。マニフェストなどある訳がない、つかみ所のない組織だ。
●イタリア式離婚狂想曲
たしかこの題名の映画があったなぁ、と思い出すイタリア総選挙でした。ベルスコーニにその気があっても、ベルサーニの民主党が連立を組むのは難しい。あまりにも犬猿の仲である。グリッロは既成政党打破が目的だから、どの党とも連立できないのが建て前であり、本音である。ほんとうはベルサーニが中道左派連合政府を立て、モンティを首相にするのがいちばんいのだが。そうすればEUは安心し、株が転がり落ちることもなかったのだ。こうなっては連立不可、一ヵ月かけてすったもんだのあげく連立/大連立で組閣出来ても、国会は空転するしかない。もう一度選挙をやり直せるまで半年は政治不在とみる。(了)