安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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モルシ、停戦成功で独裁者への道
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( 2012年 11月 23日 金曜日


●ガザ停戦
アラブ諸国やトルコ、ハマスとイスラエルが参加し、エジプト大統領モルシを仲介役に、クリントンがシャトル、バン・キムーンが来て、オバマが電話でモルシに支援をちらつかせて巧くまとめよと迫り、ネタニエフと直談判で停戦を呑ませた。
ま、欧州の出る幕がありませんでしたが、成功の鍵は、ムバラクには背を向けていたハマスが、ムスリム同胞団出身のモルシを頼りにしたためである。

●勝利にようガザ市民
8日間の戦果で測れば、イスラエルはテロ拠点1500カ所を爆撃、30人の中上級と20数人のミリタントを殺害、980の地下ロケット発射場、140の密輸トンネルを破壊、民間死者が103人、負傷者1000人以上。
対するハマスは、ロケットと、仕掛け爆弾によるバス爆発で死者6人、負傷者60人の被害を与えた。
相変わらず不均衡な戦いなのだが、停戦がきまるや、ガザはお祭り騒ぎだ。イスラエルは地上軍侵攻をひかえて、ビラで退避を警告、荷馬車やトラックで逃げて行った人々が、停戦で凱旋するごとく帰ってきた。停戦はもちろん寿(ことほ)ぐ平和であるが、勝ったと騒ぐから・・まだ厭世気分ではない。

●得た側と失った側
メディアは、この8日間の戦争で、関係国の損得を総括するのがはやっている。そしてみな一致した見方であるのもおもしろい。
 得た側:ハマス、モルシ、イラン
 失った側:ファタハ=アッバス
 苦いパン:イスラエル、アメリカ

▼最も多くを得たのはコテンパンにやられたハマス。遠く、大都市のテルアヴィヴとエルサレムを初めて撃ったことが、めちゃ嬉しいのですな。イスラエルに一泡吹かせたのですから。いまやハマスの人気は絶頂と云える。停戦合意成るや、交渉に参加していたマシャルはカイロで勝利宣言、ガザのトップ、ハニエ首相は勝利演説で、イランの精神的物的(武器やロケット)支援に謝していた。このハニエは5年前の選挙でガザの首相になったが、あれ以来一度も選挙したないんだな。

▼西岸のアッバスも任期切れに、なんおかのといって選挙しなかった。今も堂々と居座りである。ハマスと敵対関係が続くファタハからは、今回はカイロの停戦交渉に呼んでもらえず、全く蚊帳の外。ご執心の国連オブザーバー地位もムリだろう。せめてものなぐさめは、ハマスをテロ組織として否定する米は、クリントンパレスチナ側と話しするにはアバッスや、20年アラファトの腰巾着で交渉役のエレカトと会うブザマをさらした。


ハマスが勝った気になる……そんなことにならないかと懸念したイスラエル市民は、世論調査で70%が停戦反対とでた。ハマスの息の根を止めない限り、ロケット攻撃は止まない、と考えてのことだ。停戦後いま30時間を経過したが、ガザからのロケットは直後に一発だけ、境界線近くの鉄の防壁にあたり被害無し。停戦は破られていない。不思議だが、それだけハマスのロケット能力が壊滅的なのだろう。

▼モルシはマラブの賛辞を一手に受け、オバマから貴大統領のお手柄と持ち上げられ、エジプトがアラブの盟主として台頭した。アラブの春でできた新政権や、民主化とか抵抗のイスラムの動きを調停できるのはモルシというわけ。サウジは人気がない。

モルシは停戦仲介の成功で舞い上がったのか、冷静に策を巡らしたのか、いまこそチャンス到来とばかり、最高裁判事を更迭し、ムバラク追放の際に行ったデモ隊の逮捕・裁判をやり直しを命じた。先の軍トップの入れ替え(悪いことではない)もそうだが、やり方はムバラクと変わらない独裁である。反モルシのデモが拡大するか抑えられて消えるかまだ予測できないが、もし連日タヒール広場を埋めるようなデモがおこるなら、リビアもやり直しだ。(了)






Pnorama Box制作委員会


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