安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イタリア、地震予知科学者に過失致死罪
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( 2012年 10月 23日 火曜日


●地震国イタリア
イタリアは地震国である。地震の規模を抜きにして、被害地震の数では日本より多く、原因は古い石造り建物にある。イタリア中、どこへ行っても中世の歴史的な建物があり、趣がある、観光資源である反面、地震にはたいへん脆い。

マグニチュード6以下なら、よほど浅発直下型でもないかぎり日本では倒壊する建物はまずない。2009年3月にイタリア西部LユAquila では群発性地震が続き、歴史建物が集まる市のセンターでは、建物の部分的な亀裂や剥落があった。住民不安が募っていたのである。

●思い遣りは人のためならず
そこで「主要リスクの予測と予防のための国家委員会」のメンバー7人が現地を訪れ協議、町ではパニックになる住民がいるほどに敏感になっているのを、静める意図が作用したのだろう、「地震活動は危険がない」と委員会の判断を発表した。

群発地震は地震のエネルギーが分化開放されるため大地震にならない、というのがひろく通念になっている。地震学者はそう公言してきた。実際、日本の群発地震は大事に到らず終焉している。そう考えるとイタリアの予測予防委員会をあながち責めることはできないのだが、4月6日発表の6日後、まさかのMg6.3が発生、震源が浅かったため、中心部の石造建物や村々の教会が倒壊し309人が死亡、12万人が被災した。

●憎しみの判決
古い町LユAquilaはイタリア中央を走る高地にあり、南東にはしる幾つもの断層が古来何度も地震を起こしている場所にあり、そのたびに傷んだ建物を修理してきた歴史がある。2009年の地震では断層が20キロズレたそうだ。

裁判がはじまってからは約1年たったこの22日に禁錮6年の判決を被告7人全員に言い渡した。わたしにはおどろきの重い判決である。執行猶予なしの禁固6年、今後公的な地位から追放、被災者に約9億4000万円の賠償。どうやって賠償額を計算したか、7人の収入から法外な額ではないとおもえるが、重罪犯あつかいではないか。

判決理由は予知力ではなく、不正確でまちがった解釈を提供したことにある、という。判事たちも地震予知の無力を認めていて、これは世界の常識である。しかしわたしが判決を不当とおもうのは、地震対策に住民側と市政に問題があることを度外視して,あたかも委員会に被災の全責任があるかのような憎しみの審判である。委員会の地震学者はイタリアの錚々たるトップ、言い換えれば政府の御用学者である。地裁の裁判長は反政府なのでしょうか。とにかく地裁の判決は承服し難い。法廷闘争は高裁、最高裁まで行くだろう。(了)






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