安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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中国初?のノーベル文学賞
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( 2012年 10月 13日 土曜日


●文学賞の本命だったマオ・ヤン
今年のノーベル賞文学賞がという予想はお膝元のスウェーデンでトップでしたから(イギリスでは村上春樹が本命と予想)、そうなのかと。わたしはこの作家のことは何も知らない。他の候補者についても知らない名前ばかりで、理由はひとえにわが無知による。小説を手当り次第に読むのは若いうち、六十を超えると新しい小説にはついていけず、専ら売れ筋の娯楽読み物である。

●村上春樹についていけない世代
村上春樹の作品では「ノルウェーの森」を日本語学生のてまえ、授業の副読本に使わせてもらった。参考に、原著、英訳、ノルウェー語訳を比較してみると、英訳はとても良い。原作の雰囲気をよく伝えていて,ノルウェー語訳はあきらかに原本より英訳からの翻訳、したがってこちらも上出来である。訳者は日本文化の研究者で村上春樹の作品にぞっこん、インタビューほか面識もあり、日本語もわかるが、なに、英訳を多いに参考にするのがよい。

そのつぎに「海辺のカフカ」をノルウェー語で読み出したのだが、この翻訳は日本育ちの男性で、やはり英語訳を多いに参照したようだ。さてストーリーだが、わたしにはとてもフォロウできない想像的世界である。猫と会話する知恵おくれの青年、ジョニーウオーカーなる奇妙な人物……興味が失せる。空から魚が降ってきたところで読み進むのを諦めた。

そのころ同じ飛行機でバッタリ出くわした元わたしの学生で日本語の助教授のRさんが、この作品を寝食忘れて読み(原語で)「とりこになった」というではないか。世代の相違はどうしようもない。カフカのイマジンとは質が違うようにおもう。

●莫言、ふざけたペンネーム
初っ端からはなしが逸れましたが、当地でMaoYanなる中国作家は、中国で有名?でもないようだ。中国で有名な日本人作家は全著作が翻訳されている村上春樹や、渡辺淳一センセでしょう。Mao Yanの著作は当地で一冊だけ「紅い高粱」のノルウェ語訳が出ているという。マオ・ヤンなる音字では解らないが、漢字名は「莫言」と知って、ふざんけんじゃない。訓読みでは「言う莫かれ」、喋るなとの意味ではないか。読者に作者のほんとうに言いたい事を勘案してお読み下さい」という意味であろうか。中国政権が認める境界を分別を弁えた体制派賢人なのか、そもそも氏の小説は政治ぬきに中国古今の社会を活写することであったのか。選考理由は「幻覚性のリアリズムで、民話と歴史、現代を融合させた」、つまり後者である。地方役人の汚職を書いても政府への批判は巧妙に避けてきた。

莫言氏は大の日本好きで、これまで約10回訪日しているという。ならば反日暴力について一言あって然るべきだが、ふざけたペンネームが無言で答えている。

●中国系ノーベル受賞者なら9人も
中国は今回の受賞を大々的に報道し、国威発揚の宣伝に利用している。反体制派で民主活動家の劉暁波氏が受賞した時は、黙殺しいまも収監したままである。亡命中国人作家の高 行健氏が2000年に受賞した時は高さんがフランス国籍のためなのか、反体制派で天安門事件を扱った小説のためか、中国のノーベル賞に数えられなかった。驚く莫、莫言氏をもって晴れて中国初のノーベル文学賞なのである。

過去、中国系の米人など9人の移民学者がノーベル賞を受けているが、華僑一代めでないため中国人とは看做されないとしても、中国が胸を張って誇れる成果であろう。宣伝出来ないからといって黙殺するのはおかしい。日本は米国籍の南部陽一郎氏(物理学)も数に加えている。これは当・不当の問題ではなく、まして国家の問題ではない。「同じ朋がら」を悦ぶ自然の情裡である。


●ジャンルごとに独立した選考
劉暁波授賞で中国のメンツを潰したので、今回のご機嫌取り授賞になった、との解説はまったく的外れである。ノ−ベル賞は平和賞だけがノルウェーで選考され、劉暁波で中国から嫌がらせを受けたのはノルウェーである。平和賞以外の科学、文学,経済分野はスウェーデンであって、中国からちやほやされている。各賞のあいだに横の繋がりはいっさいない。(了、実は本日のコラムに、EUが平和賞にきまったアホラシサについて書くはずでしたが、つい文学賞が長くなりました。EUは次回に)






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