安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ジョン・ガードンと山中伸弥
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( 2012年 10月 9日 火曜日


●ノーベル賞まで半世紀
50年前の1962年、山中教授の生まれた年にイギリスのJohn Gurdon教授が
万能細胞と呼ばれるES細胞(胚性幹細胞_Embryonic Stem cells_をカエルの実験で実証した。わたしは成人になっていたのに全然覚えていない。おそらくこの新発見というか、成果は社会的な話題にまでならなかった。オタマジャクシのクローンではいまいち素人ヤジウマの注目を集めなかったようだ。

万能細胞が話題をさらったのは「ドリー」こと羊のクローンをスコットランドの動物研究所誕生(1996年)させたときだ。その後世界各地でつぎつぎと各種動物のクローンが作られ、愛犬のクローンをつくる、クローンで膚を若返らせるインチキ・クリニックまで現れたものです。

極めつけは韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)という獣医学者のねつ造事件である。ヒトのES細胞作成に成功したと報じられ、韓国初のノーベル賞期待に国をあげて喜んでいたのも束の間、論文のねつ造、研究費横領でこの獣医さん「韓国の誇り」から「韓国の恥」へ。ま、韓国の人工授精や卵子売買、子供から大統領まで整形手術がはやる倫理観が事件の温床である。

受精卵を利用するヒト幹細胞の研究は倫理上の問題から米では公機関での研究は禁止、他の先進国では規制がある。日本でも規制はあるが、山中教授の研究には当初助手ふたり分の予算がついたという。それで世界の研究陣と競争させる国は自慢できまい。

●山中伸弥と日の丸
徹夜のガンバリで成果が出始めるや、政府は研究資金を闊達に増やすようになった。6年前のiPS細胞(induced pluripotent stem cell人工多能性幹細胞)の開発、および5年前にヒトの皮膚からiPS細胞の培養に成功によって世界の賞を総なめにし、政府はこれらの成果を確認してカネを出す。

だが、山中教授はなんと謙虚で誠実なお人であろう。「日の丸のご支援がなければ受賞はできなかった」、これを言える学者はザラにいない。さらに「研究を続けて、一日も早い本当の意味での社会貢献をしたい」と、臨床医師の出身らしく患者を想う初心を忘れない人である。

対照的に、利根川進先生は 鼻っ柱の強い人で、バーゼル時代の利根川さんと一緒にマージャンを囲んだ友人から聞いていたところではすごく強気の麻雀をするらしい。40代で医学生理学賞を受けた時も、研究の地はアメリカですから日本から研究費を貰っていないからなのか、特に日の丸に感謝しなかった。離婚して若い女性と再婚したり、羨ましいオノコであるが、その利根川教授も73歳、随分古風な言い回しで山中教授受賞の慶びを述べておられる。(次回はガードン教授の人柄、山中教授とは臥薪嘗胆・テレパシー的な相互尊敬について)






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