安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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二期目 オバマのスローガン
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( 2012年 9月 5日 水曜日


●「チェンジ」はもう使えない
“Change, Yes We Can”のスローガンで米を熱狂し、政治・経済・教育・医療・に史上かつて経験したことのない変革<change>をもたらすと大見得切ったオバマだが、このスローガンは傷口に塩を塗るようで二期目には絶対に使えない。米の失業率は相変わらず8.+%、生活水準の低下、財政赤字を史上最も急激に増やした。大きな政府とバラマキ行政の財源に一般市民が直接感じない財政赤字ならヨカ、という手口はどこの国でも共通らしい。それで国民の生活が良くなった国はひとつもない。与野党とも「赤字国債を減らし財政再建を」と言うのは政権を取るまでの弄花にすぎない。こりずに騙される国民がおかしいのである。

ということでChange, You Canユtになってしまったオバマ政権は新しいスローガンがなかなか決まらなかった。オバマは『今度のスローガンは未来を志向するものとなろう』なんて李明博みたいなことをTVで言いましたな。ま、オバマは李のアジア・ヴィジョンに心酔しているので遺憾とも仕方がないのですが。

●オバマ 二期目のスローガンは「フォワード」
さて、今日4日開幕の共和党大会を前に8月30日にオバマ陣営が宣伝ヴィデオのエンド画面で明らかにしたスローガンはこれ、フォワード/前進である。



ヴィデオは7分ちょっと、景気失速をブッシュの責任、オバマが達成した成果を延々と自讃する。オバマ好きは感激し、オバマ嫌いは出鱈目な数字にヘドを吐く。

「フォワード」なんとまあ陳腐な、マルキストのスローガンではないか。米ではそういうコメントが保守系メディアやツイッターで賑わっている。この標語はマルクス、エンゲルス以来、共産党の旗印としてスターリンと毛沢東のポスターに多用されてきた骨董品だ。いまではロシアも中国も「同志よ進め」なんて言わなくなったというのに。

●マルクス、レーニンを知らない米のサヨク
オバマと彼の選挙スタッフはみなサヨクである。彼らオバマ陣営は『フォワード』が共産党と密着した惹句であることを見落としたか、知っていても問題視しなかった原因は、アメリカにはマルクス、レーニンを学習する歴史がなかったからではないかとおもう。「資本論」や「国家と革命」、共著の「共産党宣言」などの発禁本を持っているだけでパージされた国アメリカと、共産党が合法化されている欧州との大きな違いがここにある。

両陣営が互いに相手を中傷する極端で過激な宣伝ヴィデオに慣れっこの米市民は免疫がある。ふつうなら支持動向にさして影響しないのであるが、この最新ヴィデオは、民主党指名大会でのオバマ受諾演説予告編である。その4日の大会は当地今夜の真夜中になるため私は見られないが、予告編で大喜びの支持者たちの熱狂ぶりが眼に浮かぶようだ。

●共和党のあいまいな愛国スローガン「アメリカを信ずる」
先の共和党大統領指名大会を飾ったロムニーのスローガンBelieve In Americaパッとしない。漠然としているのだが、大会では星条旗とアメリカ/USAをがなり立てるとハイになる国民性をくすぐったようだ。しかし、「フォワード」も「アメリカを信ずる」もいまいちで起爆力に欠ける。

余談蘊蓄:共和党指名大会で、クリントンの有名なスローガン「経済だよ、バカ」<Itユs Economy, Stupid>を、ロムニーが「まだ経済だよ、我々はバカじゃない」<Itユs still about the economy and weユre not stupid>と揶揄して喝采をえたのを、スローガンの作者James Carville(ビル・クリントンの元補佐官でCNNの民主党コメンテイター)が悪用されたと憤慨して失笑を買った。

上記クリントンのスローガンのほかに私が覚えているのはレーガンの『小さな政府』くらい。エキスパートによれば、戦前の大統領カルヴィン・クーリッジCalvin Coolidgeのスローガン "Keep Cool With Coolidge" が ヒットしたという。おなじ駄洒落スローガンは日本でも自民党の元農相・谷津義男の名刺に「頼れるヤツ」と付記されていたのを記憶している(古いことで名刺が見つからない)。橋下大阪市長の「維新八策」は知名度の広がりで近来にない成功例と思う。(了)






Pnorama Box制作委員会


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