安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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(3)尖閣諸島
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( 2012年 8月 22日 水曜日


第3次アーミテージ・レポートと、その発表会の様子は前回までとし、米にも頭の痛い問題である日中の尖閣諸島と、日韓の竹島について、さらに北方領土について、連載を続けたい。まずは尖閣から:

●尖閣諸島は台湾へ
いきなり結論からはじめます。尖閣諸島は台湾の主権に! 世が世なら国家反逆罪で重罪に処される意見ですが、岩礁の散らばる尖閣諸島は日本本土から余りにも遠く、いくら思案しても日本が身を挺して護る岩礁と思えない。周辺の漁場が、主として琉球王朝と、ときの周辺国家の盛衰に則していたにすぎない。

琉球王国は薩摩が武力征服した。これを「実効的先占」Effective Occupationという。近代以前の国取り合戦は百年経てば時効であるから、明治28年(1895)日本領土に編入と閣議決定された。これを「先占の法裡」Law of Occupationと呼び、国際法上の合法である。中国がとやかく言うのは彼らの無知なウサばらしにすぎない現実的には沖縄、日本を訪れる観光客は中国人が最も多い傾向は止まない。

尖閣諸島の位置は石垣島や西表島から測ればいちばん近いが、沖縄本島からの距離は台湾からも中国からよりも遠い。九州から台湾の眼と鼻の先まで続く南西諸島が一島残らず日本領土である。日本語が通じる日本領土の美しい島々、もとより当然ではない、僥倖である。人間が営み住むことができない尖閣諸島を台湾に譲っても国益を損なうことはない。

中国が現行の中国共産党による一党支配が続くなら、台湾は自治権を賦与された中国に統一される危惧はある。逆に中国が一党独裁から国民の選挙による代議制に移行しないとも限らない。もし、中国で国内紛争が激しくなり、台湾が自主路線を強めるなら、これを奇價として台北政府に尖閣諸島をお祝儀に贈るのはいかがでしょう。資源開発に日本技術が優先され、一部権益も可能だ。

●誇張された作り話、尖閣の巨大石油資源
石油資源を手放すなんて出来ない相談と言う意見しかない。持論を反復しますが、日本独自に開発するなら人件費がワリにあわない。メンツを保つため税金をムダにつぎ込んでほしくない。

海底パイプを沖縄本土まで敷設するばあい、最深2000mもある沖縄トラフを超えなければならず、技術的に可能でも経済的にどうか。洋上リグからタンカーで運ぶしかないが、いざ,開発が現実的なハナシになれば、周辺の漁場、環境問題で行き詰まるのは必至である。あの海底にワンサと原油があるなど、ゲオポリティックの作り話に踊らされてはならない。日本の石油開発企業の方針は、一応探査する価値はあるが政府がカネと警備を提供する条件が整えばトライしてもいいという気のない態度である。尖閣周辺の油田がペイしないことを知悉しているからである。最良の解決法は人が居住生活できない『岩礁』(事実そうである)と国際認定して帰属を問わないことだが、日台中三方が納得しない。

●東シナ海石油資源の95%は中国側にある
東シナ海の稼働石油採取は中間線のすぐ西、一部日本側に跨がって前述の東シナ海盆」(ドンハイ海盆)から尖閣のはるか西方、中国本土に近い「台北海盆へ」帯状に連なっている。ここに数十の石油ガス田が試掘され「天外天」」や「平湖」など、4―5年前から稼働して上海に海底油送パイプが通じている。平湖の施設建設資金6億ドルのうち、日本が主導するアジア開発銀行と日本輸出入銀行が2億5000万ドル融通した。中国が感謝を述べたと聞いた事がない。苦々しい政経分離である。             

尖閣諸島は台湾と地続きの地質構造で、西南諸島とは沖縄トラフで一旦切れ、連続性がない。中国は沖縄海溝まで伸びる水深200mほどの浅海を自国の大陸棚とし、大陸棚の資源は中国のものと言い張る。しかしそれは暴言ではない。現在も国連が大陸棚までを領海決定の一方法として認めているのでややこしくなるのです。

●成功した北海石油の水域画定
イギリスとノルウェーに跨がる大陸棚・北海は問題なく線引きされた。北海を海岸線に有するデンマーク、ドイツ、オランダ、フランスも同時に公平に線引きされ、欧州本土側は 石油が出ないところばかりだが公平な線引きだから諦めもつく。揉め事になない。しかし東シナ海をセンターライン方式で線引きすると、日本は列島の西端にある小島を基点にし、中国は大陸の海岸線あるいは海岸の小島を基点に中央点を結ぶ。すると尖閣諸島は日本側に位置する。本土の海岸沖にしか小島のない中国は大変不利に感じるわけだ。

大陸棚の端が対岸国の経済水域200マイルに懸からない公海であれば、この方式でも中国のゴリ押しが可能である。だが魚釣島(中国名−釣魚島のすぐ先に台湾があり、沖縄がある。この場合、両方が民主的に対話出来る間柄なら日中台の中間線方式により、同意できるが、日中台は戦争、植民地という過去を引きずっているので感情的な言い合いから一歩も進めない。そういう状況が延々と年月を重ね、お互い相手が妥協しないと義憤、抗議しているのが現状だ。

●水面下の沖縄海兵隊と海上自衛隊の連携
さて、冒頭の私見を不可能にするアメリカの西太平洋戦略事がある。香港の活動家の尖閣上陸と日本有志の上陸で両国騒然としているあいだに、アメリカは表立った動きを隠して沖縄の米海兵隊と海自の協力体勢を緊密にしている。東シナ海の中国海軍は米の西太平洋ヘゲモニーにとって大脅威である。ここでは日米の利害が一致する故に、沖縄の海兵隊と佐背保佐世保の海上自衛隊のスクラムは、英と米の軍事ツーカーに匹敵するほどインティメイトである。

米は東シナ海よりも難問の南シナ海での中国の覇権に頭を悩ませている。たとえば環礁珊瑚礁でできた小島・南沙諸島がなぜ中国の水域なのか、中国人でもわからないないゴリ押しである。95年以来ここの環礁に港、監視施設を建てはじめ、常駐する軍事基地にしてしまった。実行支配完了である。この経験から米は尖閣諸島の石油資源はともかく、魚釣島を中国が軍事要塞化しして実行支配をするのを断固許さない。シリアを放置する米だが尖閣の岩礁は防衛する、必ず出動する。尖閣諸島
を台湾に譲渡する案は荒唐無稽、バッドジョークが米の視点である。それでも尚、吾は「尖閣諸島を台湾へ」を抱醸する。

日中台三方から「歴史的に固有の領土、明々白々議論の余地はない」と問答無用の声よく耳にする。歴史の一片を探せばどちらの国もキリがないほど領有の址が発見できる。一方の些細な片事が動かし難い証拠となり、他方の言いがかりとなる。江戸時代に、明治ではなどと紐解く努力は重要な考証学でも、考証学で領有権は解決しない。それは竹島でも同じである。

(次回は韓国、竹島領土問題と従軍慰安婦について)






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