安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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続・ノルウェーテロ、独立調査委員報告
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( 2012年 8月 17日 金曜日


●政府、治安当局をコテンパンに批判冴えん
近日は尖閣と竹島が沸騰していますが、当地で沸騰しているのは表題の独立調査報告を受けて、この眼も当てられない初動の失態に政府、警察がどう対応するかである。現体制で首相が主導する政府の緊急対策チームが修復できるか、テロ事件に緊急対応システムの再建が果してできるのか.大事件がおこるたびに治安人員増強、警察官の教育と訓練、無料の警察大学はいいが、卒業後に警察に就職しないのが大半のは給料が安いから、などとくだらない議論が毎度出る。

政府はこの5年で警察予算を50%増やしたと胸を張る。オスロ警察はこれまでヘリを民間からチャーターしていたが、昨年やっと自前の偵察ヘリを一保有できた。数年前、石油の町スタヴァンゲルで冷酷非常の銀行ギャング団の事件があった。取り囲んだ警察車にいた老警官が狙撃殺害されたとき、時の警察長官は防弾ガラスの装甲車を配置すると約束したが、いまだに実現されていない。

●犯罪者を優遇する社会
それなのに犯罪者擁護のシステムは至れり尽くせり、刑務所の豪華さ、服役者の刑期は同じ犯罪なら日本の半分くらい、しかも家族持ちや既婚者ならたいて毎週の外泊が許されている。開発途上国からの不法移民は一級の弁護士を無料で指名でき、刑が短くてム所の待遇がよいので、平気で悪事をくり返すのである。

私は以前、傷害致死で拘留中の日本人を警察から「お宅で彼を預かってくれない? 話しが通じないし独房で気がおかしくなならないとも限らないから」と頼まれたことがある。週末だけ、土曜に預かって日曜に独房に戻すということで、彼が日本に送還されるまでやく二ヶ月ほど我家に週末外泊させたことがある。当時は義理の両親と二所帯住居に住んでいたが、父母は寝室に鍵をかけていたと後で聞いた。だって、出刃包丁で刺し殺した外人の男が我家で寝泊まりするのだから、そりゃ怖いとおもうわな。

警察もわたしも彼は犯罪者タイプでないと読めているので心配ない。家内も日本語がわかるし乗り気だった。まだ小さかった子供達は遊んでくれるお兄さんが来るので喜こんだし何も問題はなかった。この話しを当地に来た警察関係の人に話すと頭をかかえていたが、当地の警察幹部にこの話しをしたらしい。

後日この幹部から「あれは裁判前の拘留中のことだし担当者の一存で決めたことだからあまり言わないでほしい」と通達ではなくお願いされましたな。現場の刑事が裁量出来る自由度はいいが、命令系統が緩慢のため危険な事態をきたらすのでは、とあの頃から心配していた。


●小さな国の仲間うち人事
現警察庁長官が、コテンパンの独立調査報告を受け認めると言いながらも、全力を尽くしたと警察組織の弁護と保身に務め、悪評を買った。引責辞任は当然と感じたが、この長官はストルテンベルグ首相と青年党員時代からの友人、あのウトイア青年キャンプからのポンユウである。ストルテンベルグの結婚式には介添え役をやっていた。

法務大臣とは以前の大臣時代から長く補佐官を長く務めていたである。そんなところから首相も法務大臣も指揮能力にかけた長官人事(馘首)に審査資格がないと明言して他人委せで進まない。

ノルウェーの人口は約450万人、これは大阪府の人口の半分くらいである。官庁のトップは往々にして首相の旧友から選ばれ、ぶっちゃけたはなし、気心の知れた仲間うちのお手盛りである。仲間ゴッコは予算の分け方に見え隠れし、今年も酷いお手盛りで辞任に追い込まれるスキャンダルがあった。

●警察長官、ついに辞任
さて。今夕メーランド長官が首相や元の上司からの信認を得られず、進退窮まって辞意を表明。庇ってくれない首相や元の上司では警察機構の再建はおぼつかないという辞任理由だが、捜査後れの責任をまだ自覚していない。警察畑出身でないシロウトガ指揮系統を束ね采配出来るか、私たちシロウトにも瞭然ではないか。ともあれ首相始め党首たちは立派な引け際であるとこぞってお世辞をのべた。誉め捨ての公式表現か。

ブザマなオスロ、及び現場の警察ではあったが、全員にボーナスが支給されたとお手盛りが今夕あきらかになった。もちろん残業手当をキッチリ貰った上での報奨金だ。一人平均15〜20万円、幹部は100〜150万円。わたしなんぞ小心ですから被害者家族をおもうと「受け取れません」と突き返すマネくらいは、またメディアにリークする警官がいるとおもうのだが、だれもいなかったのだな。ある幹部はオレの決めた事じゃないと開き直り、ええ、その節はご苦労さんとの意味で署員が受けたので喜んでいますと笑みを浮かべアッケカラアカンなるウトイ島を管轄する現場署長さん。こりゃダメだ。

●不信任を求めていない理由
これだけのスキャンダルだが、左派三党による与党連合は国会の多数勢力であり、いまでも支持率は50%も有る。20%割れした野田首相のように、不信任動議はかんたんではない。保守野党(右党、進歩党、キリスト民主党)が組めば絶対多数を占めるのだが、20年来一度も実現しない不仲である。今夕、党首7人と法務大臣も参加して公開討論会が開かれた。野党は不信任提議の考えはあるが、緊急国会で政府の説明と議論を通じて決める意向で、慎重な構えをとっている。

8月24日に、ブレイヴィクへの判決、結審がある。法定心理学者委員会による精神鑑定『責任能力がない』を判事たちが採用すれば、無罪、服役者病院に送られる。そうなれば国会はさらに紛糾するだろう。ブレイヴィクの親イスラムノルウェー与党労働党政府と,その若者グループを殺害するという反イスラム過激思想は異常だが、彼はキチガイのキの気もない冷静沈着な人間だ。犯罪心理学者を精神鑑定する心理学はないものか。

もし、秋に不信任動議をおこして採決されれば、独立調査会の報告に基づいた改革はますます混乱し新政府が立ち往生するだろう。本格的な改革論議は来年の総選挙が過ぎてからということになる。(了)






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