-------- ----------------------------------
エジプトに夜明け
------------------------------------------
( 2012年 6月 25日 月曜日 )
●ムスリムのモルシ・シャフィク勝つ
エジプト大統領の決戦投票までも長かったが、いざ投票が終るとどっちが勝ったのか一週間経っても発表されず、これは軍をバックにしたシャフィク元首相に決めるんじゃないかと訝る予想が欧米の論調に多かった。わたしは日本で大勢の「あれは軍事革命」に乗っ取られたとする意見に反対で、軍はもはやナセルからサダト、ムバラクにいたる独裁者に守られた権力は持っていない。クーデターなんてとんでもない、そういう力はムバラクと共に去ったと感じてきた。であるが、こうも長引くと近頃は持論を言い張れなくなっていたのである。 エジプト選管の発表も「おれたち軍に殺される」とでも言いたそうな意気の上がらぬ発表であったが、よくぞやりました。当選発表を遅らせたのはSCAF(軍最高評議会)の抵抗であるが、連日の抗議に怖じ気づいたか抵抗も一週間でおわった。ともあれモルシと軍のあいだで何らかの取引があったようだが、民政移管にかわりない。 さて、当選の発表があるや、既に大群衆のタハリールTahrir広場に続々と集まる男女の熱気といったら、言葉より映像を一見するにしかず。ここにあります。 http://www.aljazeera.com/indepth/inpictures/2012/06/2012624195841788845. ●穏健に変身したムスリム同胞団 この党はイスラム急進派、イスラム法「シャリフ」を導入するとか、イランのアフマディネジャドの頭と同質だったことは事実である。ムバラクに非合法化され、活動を監視抑圧されていればラディカルになるのは当たり前で、公認された暁には現実的対応に豹変する。そういう異文明の人心が理解できない米は、同胞団を非難牽制してきた。心配することはない。このこともわが持論のとおり運んでいて、米は欧州にさきがけて祝意を述べた。モルシは米ともうまくやっていくだろう。イスラム諸国で米と本心で協調する国は一つもないのだから、モルシで特に悪くなることもない。 ところで同胞団という名称は男尊女卑の習慣を引きずっているイスラム男らしく、英語になおせばBrotherfood,兄弟団であって姉妹を排した呼び方である。でもほかに言葉がないのかな。それで同胞団の政党名は「自由公正党」という。ま、どうでもいいホジクリはやめて、さっそく日曜の夜TVで演説したシャフィク新大統領について。顔ににあわず謙虚に"I have no rights, only responsibilities, If I do not deliver, do not obey me." _私はなんら権利をもたない、あるのは責任のみ。もし私が果たせなければ、私に従わないまでだ」。 また軍や警察、情報部にこれまで治安を維持してくれたと感謝も述べた。口先だけで懐柔するのかもしれませんが、制度、政府機関の協力を得ずして船出はできまい。軍トップのタンタウイ将軍も新大統領に恭順というか当選を祝している。正式に民政移管、新大統領の就任式(7月30日)まで軍がおとなしくしているか、100%信頼できないけれど。 ところで選挙の投票率は半分の51%ですから日本なみだ。エジプトでは歴史はじまって以来の選挙で、地方では選挙のなんたるかを知らず、ムバラクさんの何処が悪い?なんて選挙に行かない国民が多いのである。モルシが1.5%%で過半数を制したことは国民の25%が投票で選んだということ。現実はタハリール広場の群衆だけではない。しかしまちがいなく長い60年の独裁者による支配の夜はあけた。(了)
|