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ベルゲンの日本桜(1)
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( 2012年 6月 6日 水曜日 )
ワケあってこのところ当地のさくらについて調べている。わかったことなど数回コラムに書き綴ることにします。
●市内公園の八重桜 今年はいつまでも寒く、5月初めに咲き誇るベルゲンの八重桜が芽のまま閉じこもっていたが、突然夏が来て中旬に満開になりました。 場所はシティーパーク、噴水のある池の回りに10本ほど植えられている八重桜『関山』です。初めて当地に来た1971年の春、この見事な桜を見て、鮮やかな紅色の花に「キツイ色」と驚いたものです。 北欧の花は寒い気候のせいか概して小粒で色が濃い。この八重桜も強い色です。 ヨーロッパの人たちは桜に対して日本人が抱くような国と文化への特別な感性はありません。でも陽光をあびて裸で寝そべったりビールを呑んだりするのは何処の人間も好きですから、桜があればなお気分がよいでしょうね。 太い幹の桜で樹齢75-80年くらいのと戦後に植えられた樹齢50年未満の桜、および近年植えられた枝が上向きの若い桜が混じっていますが、品種はみな「関山」 です。 3年前一番見事だった古木の一本が突風で根こそぎ倒れてしまった。公園課根が腐って弱くなっていたので助けられず小さく切り崩して処分したところ、ネットに姥桜を悼む書き込みや、再生させるノウハウがないのかという不満の文がしばらく続いていました。美しい花を愛でる心は世界の人後に落ちないノルウェー人である。 さて、これら日本の桜はどこから運ばれて、いつ頃植えられたのだろうか。よく言われるのはベルゲンの自治体が戦後まもなく日本から親善のため寄贈されたという説で、市の公園課と桜学者のMagnus Joergensen教授の一致した言である。だが、寄贈したのは日本の誰か、東京都なのか個人なのか、証明する書類が見つかっていない。 戦後まもなくの東京に、世界に桜の苗期を世界に寄贈する組織があった。現在海外寄贈に活動している「ODA日本桜の会」の前身にあたる組織で、ベルゲン市に寄贈したのはこの組織かもしれない。 噴水池のあるシティーパークは1916年にそれまで海とくびれて繋がっていた内湾を埋め立てて淡水池に作り替え、回りを含めて公園にしたのだが、そのとき池を巡るプラタナスの並木道に数本の八重桜が植えられた。戦前のはなしである。どこからきた桜なのか不明。ということはヨーロッパにある八重桜を持ってきたのだろう。 イギリスではヴィクトリア時代に中国から伝わった八重桜タイプのものを改良してつくった紅色半八重の花弁の品種で、春と秋に二度咲く「アコレード」という品種があった。ところが戦前にヨーロッパ人が日本から持ち帰った八重桜のほうが豪華で花持ちがよいというので欧州に広まったといわれる。そういうことなので、とりあえずベルゲンの姥桜は欧州内から取り寄せたものとしてよいだろう。 この謂れとは別に、戦後間もなくの数本は賀川豊彦が寄贈し植樹したという説に就いて、次回にゆずります。(続く)
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