安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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シリア無情
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( 2012年 6月 1日 金曜日


●内戦すでに死者13,000 人
アサド世襲政権に反対してホムスから始まった平和的な抗議デモでは、政府軍による発砲からたちまち戦車によるミサイル攻撃にエスカレートするに及んで、反政府運動も武器を持って抗戦するようんあった。以来1年二ヶ月が過ぎた。死者が双方合わせて1万3千人にのぼる。

先週起きたホウラの虐殺Houla massacreは100人以上、女性34人と子供49人という近年まれにみる残酷きわまる手口である.国連オブザーバーは戦車のバックアップを受けた殺害者の一団を「政府派の民兵(ギャング)の仕業」と明白な事実をわざわざ述べた。国連の停戦監視団(非戦闘兵士)のできることはせいぜいこれくらい。

クリントン長官がいまノルウェーに到着したが、先のデンマークでより強い経済制裁を含む国連決議に反対したロシアと中国を非難、とくに「ロシアの聞く耳を持たない態度は、シリアを壊滅的な内戦に導く」とホネのある所を見せたが、そこまで。具体的な施策はない。

●シリアの友好国ロシアの見方
ホウラの虐殺についてアサド側は反政府テロ組織の仕業、戦車はすべて基地にあって出動していないという。アサドは戦闘があるたび、外国人を含むテロ勢力とか,アルカイダと非難し、特使のコフィー・アナンにもそう説教して譲らない。アサド政権を支持するロシアの報道はアルカイダによる市民虐殺と決めているので、モスクワ市民はもちろん駐在記者まで親アサドがいる。

●欧州ユーロの苦境と中国の薄煕来後遺症
経済制裁には常に反対する中国は外国で紛争には「暴力はいけない」とアホの一つ覚えをくり返すだけ。ま、中国政府は薄煕来事件で統率力が失墜し、対外的に大言壮語する余裕がなく、シリアどころではない。似たような事情はユーロ危機の去らない欧州でもいえることで、リビアには軍事介入できたが、いまはノー。米と一緒にバルカンに侵攻したNATO軍は往昔の記憶になってしまった。

●孤立するオバマのアメリカ
国際世論は相変わらず高くても、オバマは徒にレジームチェンジを口にするだけで、新たな軍事介入に関しては信念として持たない大統領である。しかも世界をリードする力量がない。オバマは強いアメリカではなく尊敬されるアメリカを目指した。そして、どちらも失った。米欧が非軍事的介入策に知恵を絞っているらしいが、有効な策があるのだろうか。反政府側にも武装勢力がいろいろあってテロ集団もいるなど問題がある。西側との窓口であるFSA(シリア解放軍)は反政府のひとつのグループであって政治組織でない。もし反政府の政治組織がキチンとしたものであれば、西側の支援がやりやすいのだが。リビアにはまかりなりにもそうした政党があったから介入ができたといえる。

●コケにされたアナンの停戦協定
終りになりましたがコフィー・アナンは辞めてから特使をよく引き受ける。国連職員の優遇と汚職に眼をつぶり、せめて退任してからは国連改革に力添えしたらどうだ。しかるに随員引き連れての特使が大好き、危害がないからアサドは快く会って利用するのである。仲介した成果・停戦協定も停戦監視団も一切無視されているが、無視しないアサドなら反政府抗議など起こるべくもなかった。アサドと停戦協定等アホラシイ。特使を選んだバン・キムーンは良い人らしいがアナンより能力に欠ける。無情、シリアを助ける国も組織もない。(了)






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