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オランドを選んだフランス
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( 2012年 5月 7日 月曜日 )
●不景気に良識を失う民衆
どこの国でも『チェンジ・変革』を売る新候補が選挙を制するうようになった。経済と雇用がおもわしくない時代にあって、政治のとップが野党に代れば生活が好転すると期待する人がなんと多いことか。かつてサルコジはチェンジを標榜してサルコジに勝利した社会党のオランド(Hollandeもご他聞に漏れず緊縮から成長への「変革」を旗印に勝利した。現職は「改革」を言えませんから勢のない時代の現職は負債を背負っての選挙戦となる。 このことは米大統領選挙でもおなじで、新鮮みのないロムニーが叫んでもしっくりしないので効果は薄いが、オバマ政策からの「チェンジ」をよく口にする。 オランドが7%の差をつけていた選挙戦当初の予想に反して、結果はサルコジの追い上げで3%の僅差になった。これはル・ペンの白票呼びかけに反してサルコジに投票した右派がいたためといわれる。しかしサルコジが逆転するためには右派の3分の2が必要、そこまでサルコジ側の取り込みは出来なかったというとだろう。 ●オランド政策とフランス衰退 さて、オランドはついこのあいだに思えたミッテラン以来17年ぶりの社会党大統領という。ミッテランは表情のないパっとしない人でした。積極的で華やかなセゴレーヌ・ロワイヤルと別れたオランドはミッテランに似て、サルコジとは対照的に地味な人である。TV討論でカッカするサルコジにたいして、地味にキャリアを積んできたオランドの態度が視聴者には好ましく落ち着いて見えた。人間緩慢なほどよく映るという一例である。ところでロワイヤルさんは「なんでわたしがサルコジに負けて愚鈍なエクス伴侶が大統領になるなんて」と腹立たしく戸惑っているでしょうね。 その地味なオランドが掲げる変革の政策は ▽最低賃金の引き上げ ▽教員6万人を追加採用 ▽退職年齢を62歳から60歳に引き下げ、といった国内政策をマニフェストではないが方針としている。まさにポピュリズムである。これを実施すれば国家経済の破綻である。財政赤字はオバマに真似て増税(高額所得者に所得税75%)するというアホラシさ。 ●サルコジ追想 サルコジは財政赤字に緊縮財政を布いた。欧州経済危機にメラケルを説いてギリシャ救済を実現した。フランス国民の日常生活に厳しい政策、しかも選挙前に国民の反発と人気下落を覚悟で第一次選挙を控えた今年の1月末、経済建て直しに増税を打ち出した。欧州金融危機が顕著になるまでは地中海連合構想でカダフィを盟友にするなど、後の影響や帰結を考えずに大風呂敷をあげたが、経済危機に対する欧州政策、国内政策は勇敢に正道を貫いた偉大な政治家であったと今にして思う。引け際の美しさはブッシュに呼応する。(了)
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