安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ノルウェーの移民政策
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( 2012年 3月 20日 火曜日



この項は前回コラム『移民激増のオスロ』の続きです。

●ペーパーレス移民家族
一般的な椅子法移民のケースはこうである:入国するとき難民申請を提出する。審査の結果が出るまで1年から数年かかることもあり、そのあいだもと学校や公民館、地方のホテルなどを一時収容の建物があり、待機生活にはいる。外出等は全く自由で学齢児童は通学する。

不法滞在している移民の両親から当地ノルウェーで生まれた子供を送還するのは酷ではないか…というので2006年にこの規定をゆるめたところ、それまで緩やかな増加にあった不法滞在移民が、急に増えた。

国外退去の通知を何度受けても不法滞在をつづけ、何年か子供を育てれば、身分証明書がないいわゆる『紙なし家族』Paperless familyでも、晴れて親は滞在許可を、子供はノルウェー国籍を受けることができる。こういうニュースは東欧、中東、アフリカで国外脱出を幇助するマフィアにたちまち広がり、急な増加につながったのである。

●再出発現金支援付きで帰還を奨励
政府は自発的に本国へ帰る不法滞在者に、ひとり35万円を出直し資金として贈与、チャーター幾でスーダン、エチオピア、ルーマニアほかなど数千人を送還した。応じて国に帰った者は独身者がほとんどで、IDを変えて舞い戻った者もいる。指紋を消してIDをもたない者もいる。無国籍者に送還する国はないのだから、いずれ釈放されて不法滞在する方法。

そこで政府は3歳以上の『紙なし』子を送還する規定を盛り込み1月に閣議決定した。それがいま約450人の移民の子らに実施される段になって、マスコミが大々的に報道し、2.3人の当該児童とその支援者、級友や人権活動家など支援者は政府の冷血措置を非難、TV.新聞で大活躍。マスコミに顔を出すのは正義の味方を気取る人、そんな渦中に首相と法務相はよく原則を守った。

●地元の同情レベルと国家レベル
いまの政府は左派連立で、労働党ストルテンベルグの長期政権にある。人権の左派政府ですから、今回移民の子450人を還す措置に反対する与党が多い。県レベルの労働党総会で4分の3が反対する突き上げがあった。連立の一つである社会党左派が移民法の改正を求めて動議していたのを、今日19日国会で賛否の投票がおこなわれた。結果はわずかの反対票、拍子抜けする賛成多数で可決された。反対していた党の議員が多数欠席していたり賛成に起立しなかったり、やはり地元の同情レベルと国家レベルではおのずと異なる。

●歓びも中ぐらいなり人口500万人の日
今日19日はまたノルウェー人口が500万に達した記念すべき日、500万人目となった赤ちゃん(なぜか生粋のノルウエー)に保健衛生大臣が産院で祝福しておりました。わたしが移住した1971年は425万だったのに。しかし、500万に達したのは移民人口の増加によること、しかも国民番号を賦与されていない不法滞在者は含まれないとあっては歓こんでばかりいられない。数日前まで良い人ぶっていた送還反対の報道は消え、やはり一過性だったのだ。

補記:難民認定者は送還の対象ではない。不法滞在の幼児・児童の送還に関しては個々の事情を勘案し、迫害が憂慮される国には実施しない。滞在不許可のエチオピア移民に対してはエチオピア政府との合意により送還がすすんでいる。例えば4人家族がエチオピアに帰還する際は、航空費用はもとより約10万クローネ(145万円)が支給される。エチオピアでは大金である。






Pnorama Box制作委員会


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