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イラク撤退後の不安
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( 2011年 12月 17日 土曜日 )
●オバマでなければ誰でも良い
共和党大統領候補たちの最終ディベート(Sioux City, Iowa)ではギングリッチが集中砲火を浴びた。ファニーメイとフレディマックを共和党が閉鎖しようとしたとき、ギングリッチは両公社へのロビー活動でしこたま稼いだこと(本人は否定)や離婚歴など、政治家として過去が不適切なのかも。女性問題で候補から降りたケーンの支持者がギングリッチに流れたからには、女性スキャンダルなど有権者にとって実はあまり関係ないとおもうのだが。パレスチナへの見解が歴史知らずと叩かれたが、現実的な彼のパレスチナ理解は同感である。ギングリッチは間違っていない。 さて、共和党候補がロムニーになろうがディック・ペリー、ロン・ポール、またティーパーティーのバックマンが初の女性大統領になろうと、わたしは次期大統領はオバマでなければ誰でもよいとおもっている。以下にイラク撤退後の不安、危険な変化に関してオバマのパフオ−マンスを批判、貶しめす所存。オバマに肩入れする向きは読むに及ばずです。 ●拙速、イラク撤退 去る14日、オバマは陸軍基地で3000人の兵を前後にイラク戦争の終結を宣言、WELLCOME HOMEを三度叫んだ。喧嘩で「かかってこい」と唸るような語勢、ギュッと結んだ口、笑顔はない。公約では16ヶ月だったが、ここでもオーバー・プロミスは破れた。WHでマリキ首相と共同会見に現れたオバマは成果を強調する。マリキは米の面子をたてて控えめに通した。どうやら撤退後の財政支援に具体的な規模に踏み込めなかった不安があるのだろう。 現在残る兵士4000人余りの帰還にさきがけて15日、首都バグダッドの米軍基地で星条旗の納旗セレモニーが行われた。パネッタ長官はThe US and Iraq would have "a new relationship rooted in mutual interest and mutual respect".とオバマと同じようなことをいう。それなら両国の政府閣僚の出席があってもよさそうだが、この儀式に並んだVIPは米イラクの軍関係者ばかりである。 ●1万5千人以上を擁するバグダッドの米大使館 米は完全撤退というが、世界最大のバグダッド米大使館は総勢15,000人以上を維持する。通常の大使館任務に必要の無い軍関係の要員である。内政にニラミを利かし、イランや近隣諸国一帯への情報蒐集に努める。イランへの制裁を強化した米は正確なイラン情報が不可欠である。イラクにはまだ戦闘機が無い(F−16を十数台売り渡しするが納入は来年秋)ため、イラク空軍はレーダー監視設備を持つが米空軍がいなくなったあとは制空能力を失う。 ●イラク上空は制空権を失う イスラエルはイラク上空を経てイランの核施設を攻撃しようとすれば出来る状況が生まれたわけだ。数日前イランが濃縮ウランの製造に成功したことで、イスラエルの攻撃がより真実身を帯びてきた。従来から米大統領はイスラエル首相を説得してきたのであるが、オバマはナタニエフを説得できる信頼関係に無い。 ●遅すぎたアジアコミット 中国のアジアへのヘゲモニーを阻止する米の環太平洋コミットメントで日本や南シナ海周辺国家でオバマ株があがったが、この重要な地域をオバマは就任以来注意を払ってこなかった。ありがたがってばかりいないで遅刻した先生に苦情を言うべきだった。グローバル環境問題に背を向け、欧州経済危機に不平を言うだけで支援できない米は欧州の信頼を失なった。中国の脅威にアジア諸国を味方につけたはいいが、温家宝に国際ルールを順守するようにと答えるだけで、強いことはなにも言えないオバマである。(了)
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