●一欠けた
EUサミットは仏独主導の財政規律強化し管理する協定、略称Fiscal Compact(財政協定)をユーロ17カ国総てが賛同、ユーロ圏外のEU10カ国は英国を除いて合意した。
キャメロンへの風当たりが強い。EU各国の批判は当然としても、国内野党以外にも、重要な政治的決断を国民がなにも知らされていなかった不満がある。前回のコラムにも書いたが、キャメロンが協定にのらない兆候は顕在した。説明がなかったなどといまさらブツクサ言い出すのは東西どの国民でもおなじ現象、政治家が心で国民をバカにしているが、しかたございません。
キャメロンが英人記者との会見で開き直って「協定内容は英国の国益を損なう、わたしは国益をまもった」と語気を荒げた。サッチャーさんも同じように英国を欧州から孤高に置いたが、キャメロンのようにいきり立つことはなかった。
● フランコ・ジャーマン体制
サルコジはキャメロンの拒否権行使をしかめっ面で非難してみせたが、内心「ホッ」ですな。メルケルは「画期的な前進、危機回避への新しいチャンスが生まれた」と自讃。ベルスコーには嬉しさを隠せず、その分イギリス非難に力が入っております。
総じて欧州株はやや上昇したがイタリアとスペイン国債の利率は下がりました。今後も2ギリギリまでは下がるだろう。
財政協定によってフランコ=ジャーマンよるEU支配体制が確立され、ブラッセルのEU官僚が加盟国の国家税制をコントロールするようになる。これまでは通商や労働移動の自由などの法律面で加盟国の法規を定めてきたが、それが財政面までチェックと、罰則を自動適用する管理体制ができあがる。次の条項に合意国の主権が削られることは明らかだ.
▽ 財政赤字がGDPの3%を超える場合〔自動的帰結〕が課せられる
▽ 各国憲法にEUが提唱する財政ルールを明記されるべき
●救済資金を増刷、ほかに知恵も無く・・
また打ち上げだけで機能しなかったEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の後継機構ESM(欧州安定メカニズム)を2012年7月に前倒しすることや、IMFに加盟国が合わせて1500億ユーロを拠出することが協定にある。
つまり、イタリア救済に必要な資金要するに各国の中央銀行がお札を刷ってIMFに提供するということです。米中日が財政支援出来る余裕がないので外に方法がないといえ、そもそも欧州経済危機をもたらした原因は通貨供給量を増やし増刷してきたからではないか。一時しのぎであって根本的解決にはならない、もっと大きいバックラッシュが襲うだろう。
来年3月に協定締結を目指す。ユーロ圏外のハンガリー、チェコ、デンマークとスウェーデンは持ち帰って閣議にはかり、アイルランドは協定が合憲か違憲かの審査が必要で見込みは50-50といわれる。
ドイツとフランスでは国民の65%が脱EUを望み、危機のイタリア、スペインで離脱を望む者は35%と少数。マルチ国家が信頼し合い、政策・財政・金融で協力団結できる世界の地域は欧州しかない。それでも上記が示すように国民は我が身の利益が協力の第一条件なのである。(了)