安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興

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外圧の諸相
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( 2011年 11月 16日 水曜日



●戦後引け目になった日本人
沖縄米軍属の犯罪が公務中を理由に警察が不起訴を決め、米側が人身事故にも拘らず裁判せず交通法規で処分したこと。そのような主権国の人権無視は独英伊ではありえない。米は政治問題化することを怖れるためである。日本では沖縄県民がいくら抗議しても政府が問題化することがないと米が知っているからである。

ということを前回の一部に書いた。このことは日本政府の「お人良し」な特徴をあらわしていると同時に、米が無言のうちにかける圧力、外圧に弱い姿が相手に見透かされている。

●外交に言辞を衒う大愚
野田首相のTPP参加表明決意と、APEC前後の雲の中を漂う如く一定しなかった言動は、お人好しと外圧に阿る日本を淡々と感じた。首相個人のことではない、戦後日本人が共有する国際社会へ一歩下がった遠慮である。野田−オバマ会談後に双方の発表に食い違いがあったのは、日本流の陰影ある表現、玉虫色の解釈をゆるす言い回しの故である。日本人同士でも農林大臣は「TPP協議に参加」を「TPP参加」ではないと解釈した。なるほどできないこともない。

●外圧の諸相
さて、わたしがまだ日本にいた60年ころ、米が突きつけた貿易自由化を「第二の黒船」と形容した。通産省は屈して綿製品の対米輸出規制に屈した。日本産業を引っ張ってきた東レ、クラレ、三菱レーヨンなど繊維業界は逼迫した。自動車業界はまだ微々たるころである。しかもGATT交渉が追い討ちをかけ、結果として効率の良い輸出産業に生まれ変わったのであるが、米がかけた外圧はさほど米経済を救済したともおもえない。

●TPPに縋るオバマ
そしてオバマはいま雇用拡大と米経済の恢復を恃んでTPPに躍起である。加盟すればうちの雇用は○○%アップ、貿易黒字が○○弗増加、おたくの経済効果はこうこうと、まことしやかな試算を示すと、南アジアの国々は自国に失う物が少ないので喜んで靡く、当然である。

だが環太平洋諸国と日本の国状は大いにかけ離れている。総ての加盟国がオバマの言うようにWIN WINではあり得ない。TPPが一個の経済圏を緩やかに規定するとすれば、EUを参考にするのもまんざら悪くない。経済破綻をおこす国もあれば、当地ノルウェーのように加盟しなかったから直接の逆風を逃れた国もある。

●新刊:Bowing to Beijing
「北京に屈す」(とでも訳すか) 副題「バラク・オバマはアメリカの衰退をいかに速め、中国覇権を導いたか」。共著者のひとりBrett M. Deckerは WSJ紙の編集委員で香港支局長、WT紙編集員、政府機関にもいた経歴をもつ。
本書の案内文によると、危険な食料品や薬、玩具から産業スパイ、米政府の譲歩集めやロビー活動へのワイロから軍事力増強を続ける犯罪国家の内幕と、その中国にオバマ政府はアクションを起こさないどころか、中国不祥事の隠蔽を活発に行っているという。






Pnorama Box制作委員会


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