安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興

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ティモシェンコの盛衰
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( 2011年 10月 12日 水曜日



●ティモシェンコ前首相に禁固7年
ユリア・ティモシェンコ(50)に禁錮7年の判決、理由は首相時代の09年に結ばれた烏露(ウクライナ−ロシア)天然ガス合意に職権乱用があり、鵜に150億円の損害をもたらしたとし、賠償命令も付け加えた。


この裁判は、途中経過が公開されず、判決の11日だけキエフ裁判所大法廷の半分をメディア100人に公開、警備員が数十人という見せしめのツクリである。

若干31歳の裁判長なんて、こんな場面で若手起用はいただけません。この判事Rodion Kireyevが起立して判決文を4時間もかかって読み上げる。一気に読み終えず、30分ごとに法廷は休憩と再開をくり返す。長文の判決文では要旨をよみあげ、あとは書類で渡すのが迅速裁判を旨とする先進国の方法だが。判決朗読4時間ですからそのあいだ被告のユリアさんは娘と夫に寄り添われ、耳打ちおはなししたり、iPadでしょうか激励のメールを読んだりして裁判長が終るのを待っている。2ヶ月を超える拘置生活の疲労は隠せない。同情を呼ぶだろう。


裁判所の外ではユリア支持の中年たちが2000人ほど、警官隊と押しくらまんじゅう、いかんせん若者支持が減ったのでデモ側が押し負けた。


●ヤヌコヴィッチの復讐か
オレンジ革命がたちまち破綻し混乱、ユシチェンコ体制が前に動けなかった。親露派のヤヌコヴィッチが大統領に返り咲いて民主化の希望は消えたが政情は表向き安定した。黒海のロシア海軍駐留を延長し、ロシアとの関係が改善したので天然ガス供給価格を前年にティモシェンコが合意した価格より低く割り引いて最終合意ができた。だからといってライバルのティモシェンコを犯罪人にしてしまうようなヤヌコヴィッチには見えなかったのだが……。またユシチェンコが犬猿の仲に離れたといえ、法廷でかつてのユリア同志を弁護せず非難するとは、思いもよらなかった。

●オレンジ革命のあのころ
オレンジ革命についてコラムを幾つ書いたか、いつもユシチェンコの横に立つ三つ編みを頭上に結上げた金髪美人で真っ白なコートの女性は何者かという大衆的興味からはじまり、革命後首相になってモスクワに乗り込みプーチンにガス供給を談判、見事勝ち取ってきた豪腕女性だったころ、熱心に書いた。そして アホらしくなった。夫とロシアからガスを輸入するビジネスで資産を作ったちょっと胡散臭い過去(ロシア警察から贈賄罪で指名手配される)、の経歴など、陰謀家だが異能の人物であることはたしか。そういえば金髪は染めで地色はダークブラウン、拘置中に染められなかったあとがありありです。

●プーチン激怒、EUは加盟申請を凍結
判決について、合意相方のプーチン首相は訪問中の北京で怒りました。「あの合意は烏露の企業間で合意しCEOが署名したもの(プーチンもティモシェンコも署名に関係せず)、判決が理解出来ない。合意内容を疑わせることは利益にならない!わが国を貶めるものだ」。形式は鵜の国営企業ナフトガスNaftogazと露のガスプロムGazpromだが、両国首相の関与がないとは白々しい。

このティモシェンコ裁判を不当とし、もし禁固刑を課すならEU加盟の協議は凍結すると警告してきた。現在のEU危機を考慮すると、加盟問題の凍結に格好な材料かもしれない。

●転禍爲福、因敗爲功(禍転じて福となし、敗によりて功となす)
国際世論、特にロシアの批判にヤヌコヴィッチは未だ決まったわけではない、上告審もあるし……と早速トーンダウンした。もし、上告審でユリアさんが実刑を免れるか執行猶予にでもなれば、禍転じて可と為す一連の裁判歴が彼女の政治活動にプラスとなる。やんぬるかな、ヤヌコヴィッチの出方が難しくなりました。
(了)






Pnorama Box制作委員会


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