●久しぶりの米抗議デモ
人種のルツボたる2大都市ニューヨークとロスアンゼルスで抗議デモが連日見られるようになった。NYデモは一ヶ月近く続いており、散発的に全国各地でも発生している。ところがデモ参加者が掲げるスローガンが、プラカードの数だけバラバラの要求が書かれている、例をあげると:
戦争反対派遣兵即時撤退、資本主義反対、無政府自由経済を、無政府社会主義を、ビルデベルグ(欧米の王侯、政治家や国債企業家による秘密クラブ)反対、銀行救済反対、水道フッソ混入反対、原発反対、化学剤の空中散布反対、国境開放、大学無料、金持ちを食いつぶせ、Fed廃止、儲けを人民に、外に出て叫ぼう、etc. etyc. 個人的な訴えもある:
「私は失業中、屋根と食べ物が欲しいだけ、願い過ぎでしょうか?」、「職をください、大学を卒業して3ヶ月、まだ就職できません」etc. etc.
過激から荒唐無稽まで、統一性がまったくない。これではいくらやっても一般の支持はえられず、政府は応じてくれない。お相手はNYPD警察だけだ。デモ参加者は公式主催者のいない雑多な烏合の衆で、50年代の「怒れる若者」タイプ、60年代半ばのベトナム反戦プロテストソングや薬物常習ヒッピ−のタイプ、暴走族ギャングのタイプまで、一概に定まらない。映像を見ているとまことにアメリカ的である。
彼らはなにを言いたいのか、標語から仕分けると政府批判より経済界批判のほうが多い。集約すれば格差社会を生む経済界の「強欲」への抗議、文無しが金持ちに抗議する図である。失業者が失業のまま1年2年となれば携帯で互いに連絡し合い、個々がプラカードを作って蝟集する。いまそういう時節にさしかかったのだろうか。
景気も失業率もよくならない。オバマの3兆ドル第2弾は議会で宙に浮いたまま、金持ち増税も議会の賛同が得られない四面楚歌の時節がら、アラブの春に特別な共感をもつ層が自然発生的に街路に出てきた。野営テントもある。ここに沢山写真があります。
●説得力を失ったオバマのTVインタビュー
先日abcTVでG.ステパノプーロスのオバマインタビューを録画でみたが、あいかわらずですな。共和党と妥協に努めているがいつも拒否されると言い張る。議会リーダーの言はいつもオバマが妥協しないというんですがね。55%が一期限りの大統領と考えるabc世論調査結果どう思うかとの問いに、イエス素直に認め、あなたはUnderdog(負け犬)ですか、との質問に“absolutely,” because of the economy.笑えませんね。そのあとでオバマ政策自讃の弁を滔々と喋り出す。次の選挙では将来のヴィジョンが描けるかが決め手というあたり、選挙に強い過信があるのだろうか。いい加減退屈してチャンネルを変えました。
●格差社会と増加する失業若年層
住宅の価格は下がりっぱなし。ウォールSt.はリストラ解雇がまたぞろ、バンカメがよくない。米でも若年層(24歳以下)の失業率は20%を超える。ウォール街のデモ、ブルックリン橋を占拠したグループに失業中らしい若者が多かった。
貧困層は増加傾向にあり、4000万を超えるというから人口の17%だ。ちょっと怖いほどである。米の貧困層とは18歳未満の子どもが2人いる4人世帯で年収200万円に満たない家庭をいう。しかるに雇用者側と低賃金労働者の給料格差は三桁ですぞ。米中露は想像を絶する格差社会なのである。
●助っ人、労働組合が合流
負け組は団結が苦手であるため、60年代半ばのように日欧の学生運動にまで発展したような広範な運動にはならないだろう。と思っていたら昨日水曜日のウォール街デモに労働組合が参加を表明、組合有志だけだが、コミュニケーション組合、教員組合、先週財政支援を表明した運輸組合、看護婦連盟、反オバマを鮮明にしている米最大の労組ALF-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)などが名乗りをあげ、エールを送った。
暴徒化する惧れは消えないが、大統領選が本格的に始まると抗議のエネルギーは分散し、自然発生したデモは自然に消えてゆくのだろうか。あるいは予備選挙の争点となって抗議に火がつくのだろうか。
●断末魔のギリシャ
話しを戻して、失業者を含めた抗議デモやゼネストで威勢がいいのはギリシャ。一昨日は労働省の職員が大臣室を占拠して気勢をあげた。国民総ヤケッパチみたい。EU各国はギリシャ支援を見捨て、DEXIAをはじめギリシャ不良債権に苦しむ自国の金融機関建て直し(資金注入)の準備をはじめた。いわゆるギリシャの「秩序ある破産」=「飼い殺し」へのシナリオである。すると途端に3日の株価暴落が元に戻ったではないか。ゲンキンな世界ですね。ギリシャ支援より欧州自国銀行の破産回避が優先される世界だ。
ギリシャ若年層の40%が失業、職を探して国を出た若年層を含めると50%以上になるだろう。イタリアは現在国内若年層の失業率40%、最悪はスペインで50%を越えました。円の国の旅行者は格安感があります。ただしスリが増えています。くれぐれも油断めさるな。(了)