安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興

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米メディアの法廷バイアス
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( 2011年 10月 5日 水曜日



●Amanda Knox 逆転無罪
アマンダ・ノックス控訴審法廷は逆転無罪。アマンダは拘置所に出所サインと持ち物を取りに寄って12人の警官が空港までエスコートし、ロンドン経由で家族とシアトルに帰った。

このひと月の米メディアは、26年の実刑判決をうけた若く美しいアマンダに無罪のキャンペーンといえるほどワンヴォイスでした。事件と法廷の町ペルージャへ被害者側の英報道体制を凌駕する米報道陣が大挙して押し寄せた。米英とも数局が法廷実況する騒ぎである。

イタリアの善良な市民はアメリカ人を目の前にすると遠慮するところがあって、弁護団の主張に反対の声が聞かれない。そのむかしムッソリーニを逆さ吊りにして米におもねった国民性をひきずっているのでしょうか。TVにはアマンダ無罪に歓びを語っているイタリア人の様子が写される。

●捜査不備を突く弁護側
弁護団の攻撃は、捜査がちゃらんぽらんでDNA鑑定が採用出来ないことを民間による鑑定で実証した。イタリア地方都市の捜査に米の弁護団が捜査ミスを追求するのはいと容易いことだろう。無罪を証明することが困難なケースにたいして、弁護団が採用する戦術は捜査のミスを糾弾することである。そうすると「疑わしきは罰せず」に忠実な陪審は「無罪」を決定するしかない。実況中継は陪審に計り知れない圧力となっているのである。

●陪審を制するメディアのバイアス例
▽2歳の娘を殺害遺棄したとされるケーシーCasey Anthonyはアマンダと年格好がおなじ、若くて美人、メディアの絵になるところから全米の注目を集め、結局無罪。ケーシーは虚報、アマンダはナイトクラブの経営者を犯人と偽証でそれぞれ有罪だが、量刑は拘置期間で清算済みとなった。

▽旧聞にぞくするが、妻殺害に問われたシンプソンRobert Simpson事件では検察が証拠にした革手袋が法廷でシンプソンの手にマッチしなかった。弁護側が縮んでいることを知って証拠品の信憑性を否定したわけだ。このシーンは実況中継されているので陪審員は抗えない。アリバイを示せないケースで弁護側の戦略は捜査のミスをついて無罪を勝ち取ることだ。

被害者ケルヒャーMeredith Kercherの英国では米のお祝いと逆に沈んでいる。アマンダと当時のボーイフレンド、ソレシトRaffaele Sollecitoが無罪になっても、事件そのものは解決されたわけではない。麻薬の売り手、流れ者の黒人による単独の犯行で事件がクローズされるなら、被害者家族はうかばれない。

イタリア検察は最高裁に上告する意向だが、アマンダは出国しないので実刑でも自由の身である。(了)






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