●本会の山場、アッバスに起立拍手
秋の国連総会最大の山場、23日のアッバス演説をTVのライヴで視聴、長い。ちょうど昼寝の時間帯なので途中で無我の境地でしたが、起立拍手の多いこと、オバマ演説では拍手なしだった。アフリカ、中東、南米を中心に議席数の多い小国が賛成に立ち上がると、まるで総立ちの様。最前列の米はクリントンが欠席して、国連大使のスーザンライスが無表情に座っている。時々口中のガムを噛んでいるのが見える。シンガポールなら議長の「退場」命令だな。
かわってナタニエフ演説では先の拍手派がダンマリ、米欧が拍手するが数全体の割が少なく長くは続かない。昨年のナタニエフは、各国元首の演説でも迫真ピカ一の名演説だったが人気博したアッバスのあとでは調子がでなかった。
●左寄り国連組織を踏襲する潘基文
国際ニュースTVはラマラ大統領府前に集まった群衆の歓呼する様子を挿入して見せる。大変な熱気である。アッバスが演題で「これが今朝バンキムーンに渡した申請書のコピー」と用紙をかざしたとき、ラマラは地鳴りのようなどよめきに沸いた。申請書を渡したときかその前に、潘は数年前に提出してしかるべきだったと言ったという。
しかし、演説を聞いているとパレスチナに悪い面はなにもなく、虐げられた善良な民が44年の占領下、人並みの独立国家を待ちわびて・・もうこれ以上待てない、パレスチナの春をいま!という論法。武器の密輸やロケット砲をイスラエル側に打ち込むこと、イランやシリアからテロ支援を受けていること等は勿論一言も無い。和平交渉が決裂したのは、イスラエルが西岸入植再開したため、入植建設が進む中で交渉は不可能と絶望した。これが演説から聞き取れる国連加盟を持ち出した最大の要因でした。しかし筆者の持論は、常に己が正しく相手に非があるとするパレスチナの姿勢が和平をこじらせてきた。
●中東の世界観は陰謀史観
相手が一方的に悪いとするのはアラブの特質、アフマディネジャドほど極端でなくても、事件があればユダヤあるいは米政府とCIAが元凶とする「陰謀」説で世界の現象を理解したつもりの政治家、独裁者が中東を動かしている。情報メディアが未発達な国では、バカが本当はこうだとウラ事情を知っているかのように陰謀史観を振りかざす。アッバスは、この国連加盟申請にまつわる演説でアラファトと同格の地位に奉り上げられる。ハマスとの権力争いはカタがついたとみてよい。数日後にラマラに凱旋、ガザからも熱狂の出迎えを受けるだろう。
●そして宴はおわる。
申請書は次の月曜に潘基文から安保理に協議要請されるが、すぐ協議されるわけではなく、最後には米が拒否権を発動する。よくて総会へ差し戻し、現在の非加盟国オブザーバー地位を正規のオブザーバーに格上げすることになろう。カルテットは期限を切って和平交渉再開を促したが、進展は望めまい。パレスチナの失望と、暴力に戻るシナリオなら大いにあり得る。(了)