安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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シャイだったカダフィ大佐回顧
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( 2011年 8月 23日 火曜日 )



● 詰みですね、投了
将棋では詰み、投了の瞬間がきた。戦争では投降するか逃亡だが、カダフィなら反乱戦闘員に捕捉されるのがふさわしい。反体制派の臨時政府は「報復はしない、大佐にフリーパッセージ(逃げ道)を開ける」と民主的なことをいうが、トリポリ90%を抑えた反乱蝟集の群れを統括し司令する能力はゼロだ。3人の息子と同じように捕捉され、ベンガジに送られるだろう。

この1ヶ月、カダフィは姿を見せず、声の放送だけであるところから味方の部族を恃んで既にトリポリを脱出、国外逃亡したのではと憶測されているが、可能性は低いとおもう。

チュニジア、エジプトのようにNATOの援軍なしに革命を成立した国では前政権に在った者を新政権が裁くことができる。だがリビアの場合は戦闘を支援したEUと米が国際刑事法廷で裁くよう主張する。新政府がその気でも国民は不満だろう。

●はにかみ屋の大佐
想えば27才のカダフィ大佐が軍事革命に成功し、はにかみ屋の砂漠の子が国家を動かす地位について豹変した。わたしはカダフィが30才の頃、テントの前で焚き火を挟んでBBC記者のインタビューに答えるカダフィの1時間番組を鮮明に覚えている。老練なインタビュアーにシャイな青年カダフィが英語で答えていた。あのウブな表情と態度は演技ではなかった。カダフィは英陸軍に一年留学しているので、英語を流暢ではないが使えた。

●傲岸不敵に豹変
その後、言動服装が度外れに異常になり表情を読まれない目つき、黒めがねを愛用し、インタビューはで英語を使わなくなり、あさっての方を向いて答えにならない主張で煙に撒いた。傲岸な態度に豹変したのはシャイで軽量に見られるのをカモフラージュするため、自己防衛の表われだったとわたしは考えている。

アラブでの会議にも議事行程おかまいなしで、リビア、エジプト、シリア三国合併によるアラブ連盟を提唱したり、アフリカの盟主を標榜したり、多くのテロ事件の黒幕であった。幼稚な世界観といえ、それを権力者が実行に移すと第三者にはマンガでも当事者には死活問題であろう。

わたしはマンガとしての愛すべきカダフィが面白くてコラムを沢山書いた。世界最長の独裁者にはそれなりの非常の精神があった。その最後にあたっても別に後悔していない。カダフィの傲慢な自信が米とNATO を敵に回して政権を維持出来ると判断を過った。6ヶ月は長くも短くもない。経済的な兵糧攻めと兵士武器弾薬が窮す頃になった成りゆきだ。

●はかない国民の知恵
時の権力側に身を移すのは被支配国民の知恵、既定のパターンである。米軍が侵攻したバグダッドでは市民が歓呼して迎えた。トリポリ市民は熱狂カダフィ支持者である。市街に入ってきた反乱戦闘員をみるや、反乱分子と戦えと武器を支給されていたトリポリ市民はその武器を持って加わり、カダフィ打倒に気勢をあげたのである。白虎隊やひめゆりの塔を持ち出さないでくださいよ、今日の日本だって状況が同じならえらそうことは言えまい。

●先の見えない復興と民主化
さて、戦闘の主体で武器を持った烏合のならず者たちをどうするか。破壊尽くされた都市、民主化の道のりはエジプトの数倍難かしい。好材料は石油産業再開のメドがたったことで、その主な輸出先であったイタリア、スペイン、フランスの経済にプラス影響があること、石油価格が下がったことか。(了)






Pnorama Box制作委員会


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