●下院、共和党案を採択
オバマがデフォルト回避のため議会に求めた米債務上限の2兆4000億ドル引き上げが、オバマが到底受け入れられない厳しい条件で採決された。共和党がリードする下院の財政再建案は債務上限の引き上げ条件として支出の削減(Cut)と管理(Cap)、均衡財政(Balance)を義務づける憲法修正を盛り込み、オバマの増税案に触れていない。即ち反対。火曜夜の投票は234−190、予想差域の大きい結果が出た。
こういう結果になると予想されていたので、18日のNY株は90ドルも下落したのである。
投票の1時間前にWHの記者を前にオバマは再度拒否権をちらつかせ、オバマの案Grand Bargain(10年で4兆ドルの赤字削減)がいかに共和党に譲歩しているか、増税(企業と金持ちからの増税で1兆ドル)はするがメディケアを含む社会保障の一部財源と支出削減を強調した。
●6人のならず者に托すオバマ
オバマは、上院バイパルチザン・グループいわゆるGang of Sixのバランスのとれたアプローチに次の期待をかけている。上記の下院通過した共和党案は民主党多数の上院で否決される見通しだが、プランBと呼ばれるGang of Sixが提示する予算削減は当座の継続政策に支障のない小額にして、あとはオバマスタッフに一任するものである。こんなアプローチは後日禍を残す応急手当にすぎない。
●デフォルトを招いたオバマの浪費
確かに共和党はデフォルトの危険を政治ゲームに利用している局面がある。しかし金融界や自動車企業の救済に、医療制度、奨学金、政府機構の拡大にジャンジャンお金を使って借金をふくらましたのはオバマだ。オバマが就任後、矢継ぎ早な改革に財をつぎ込み、財源は撤退に伴う戦費削減で補えると説明されていた。そりゃありがたいがホントにそうなる?ウソだった。いまになって請求書が払えないからと債務上限を膨らませるのは不正な錬金術である。
●癇癪で地が出たオバマ
15日には癇癪を起こして「おれにハッタリをかけようってのか。vモDonユt call me bluffモとヤクザまがいの言葉を共和党下院リーダーのEric Cantorに向かって言った。わたしはハッキリNo 4 More Years for Obamaなのでありまして、デフォルトに直面してもよい、いやその方がよろしいと思う。世界経済に及ぼす影響を実地に見物したいとひそかに期待している。
●デフォルト待機モードに入ったFRB
ユーロ不安を抱える欧州も、世界の金融界も米のデフォルトに恐怖があるので、そんなことにはならないだろう、8月2日のデッドラインまでに折り合いをつけるだろうと実際まじめに考えているのか危機感が極めてすくない。
20日のニュースは、オバマは赤字削減策の法制化手続きがズレこむ場合は数日間の債務引き上げを承諾したこと、FRBがデフォルトに備えて財務省と数ヶ月前から協議「今は有事対策の段階に入っている」フィラデルフィア地区総裁が明らかにした、
●それでも米国債はジャンク債にならない
米国債を保有するトップの中国と2位の日本はどうするつもり?米政府と協議して満期になっても放出しないだろう。各国中央銀行が米国債をパニック売りするとは考えられない。金利の上昇は避けられないが、世界的に民間の保有する総量は限られている。最もつらいのは米国民だ。米では保険会社、年金基金や銀行が資産を米国債に換えて保有しているためまたもや金融クランチがおこり、失業者がふえる。
●良薬口に苦し
そうなって始めてオバマは財政赤字の大削減が不可避となり、緊縮財政を世界に示して債務上限の引き上げが挙国一致で採択される。通らねばならない再生の道だ。(了)