●改善しないギリシャ危機
債務危機のギリシャはEUとIMFから財政支援を受けたが、一向に良くならない。S&P(スタンダード&プーア)の信用格付けは最低のCCC。これより下は債務不履行が確定した国家破産となる。
パパンドレウ首相は支援を受ける条件である緊縮財政に思い切った措置、公務員給与から医療、年金まで削れる所はすべて削り、増税措置を施行しているが、野党の抵抗で効率が悪い。それにもましてオステリティー(耐乏)を強いられる国民の反抗が収まらない。政府省庁の輩が放漫浪費したツケを国民にまわすのはけしからんという。
メラケルは民間金融機関が国債の償還期間を延期すりょう提案し、サルコジは一刻もはやく追加支援でユーロ助ける立場の違いはあるが、ギリシャがコケたらをポルトガル、スペインへ波及する。日本は復興資金に国債を発行しようかという議論がまだできる余裕がある……喜ぶべきか。
● ユーロの錘、メラケルとサルコジ
このままではギリシャが破産に至るのは明らか。やり繰りするにもギリシャの国庫は空っぽで資金注入が不可欠だ。そこでユーロ両輪のメラケルとサルコジが追加支援を確認し、国債金融界を安心させるパフォーマンスを見せることがとても大事なのです。おかげでギリシャ国債利回りは急落、価格が上昇に転じ、銀行株が8%急伸した。
実際には23,24日にと挺されているEU首脳会議で合意し、7月11日のユーロ圏財務相会議で決定というプロセスだが、それまで待っていたらデフォルトの危険があり、サルコジとメラケルが『やります』演技を見せた。そこまでギリシャは危機が迫っているのである。
●財務大臣に国防大臣を起用
しかし莫大な追加借金を背負う訳で、怒った市民のデモは凄まじかったな。血の気の多い国民を持つ政府はたいへんだ。パパンドレウは内閣改造で財務大臣にライバルのベニゼロス国防大臣を配置した。これから始まる経済戦争には金融の経験がない国防大臣が適任というわけでもないが、緊縮財政遂行の大任には政治力が重要、ベストの人事と歓迎されている。
●そして誰もユーロを使わなくなった
さて、追加支援でギリシャが立ち直るか希望は持てない。危篤の病人を人工心肺で延命させるようなもの。欧州各国は、ギリシャが引き金になって世界金融危機の再来を本気で懸念するようになった。ユーロ安が止まらない。ギリシャがデフォルトでEUから脱落、続いてアイルランド、ポルトガル、スペインがデフォルト危機になればユーロは崩壊する。そんな最悪事態がまさかと思えなくなった。(了)