安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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がんばれ越ちゃん
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〈 2011年 6月 11日 土曜日 )


●南沙諸島ダイフン油田
南沙諸島の領有権をめぐって中国はいまベトナムと係争をエスカレートしている。ベトナムが排他的経済水域とする海域でセイスミック探査を行っていた。ベトナム石油ガス公社(PetroVietnam)保有の「バイキング2号」という2D/3Dサーベイの調査船。船名で明らかなようにノルウェーの民間石油開発社がリースしてフランスの会社が技師を派遣している。

探査場所はダイフン(Dia Huing)油田、ここで日本の出光さんが既に採油しており、探査の発注には出光を中心に日本の開発数社が関係している。

係争海域ですからベトナムは当然海軍の護衛艦"Van Hoa 740を並走させていた。5月29日にバイキング2の調査を邪魔した中国艦艇に"Fei Sheng No. 16" と "BI 254".が31日再び現れ、スピード接近や船首の前で小休止するなどの妨害と威嚇射撃をした。

●中国の偽装漁船団
ベトナム外務省が抗議し、ハノイ中国大使館前で反中デモがあった。事態がこの辺りまで来ると、探査船は一旦引き上げるのが慣例とあきらめるのが日本人の神経。イケませんね。しかしベトナムは外務省が抗議文を北京におくりつけ、敢然と探査を続行。応えて中国は9日に件の中国艦艇2隻と(偽装)漁船団がバイキング2に接近、英語とベトナム語のアナウンスに応えず、漁船が漁労用の機具をつかって音波センサーのケーブルを切断してしまった。

●セイスミック探査について
すこしこのケーブルについて粗っぽく説明すると、探査船は船の下でカノンを打ち、音波が屈折率の違う各地層から反射して返ってくるところを音波センサーでキャッチする。反射の時間差で地質構造の断面を読み、石油が貯留されている箇所を明らかにする方法である。聴診器で体調を知るように音波で地球の内部を調べるわけだ。音波センサーを幾つも取り付けたケーブルを船尾から流して計画した海上を碁盤目を描くようにカノンを打ちながら航行する。だからケーブルを切断されてしまったら調査不能、港へ戻って取り替えなければならない。

●中国に怖じけないベトナム
ベトナムは負けていない。米に負けなかった北越の人間、戦争中は中国の軍事援助を受けたが、戦後は中国の影響を排除し、世界の労働市場で中国を浸食しつつある。ケーブル切断のあった9日,直ちにベトナムの首相グエン・タン.ズンが「南沙諸島はわが領土、議論の余地はない。ベトナム全党、全国民、全軍を挙げて今後も南沙諸島の主権を主張し、領土を守る最大の覚悟」と激越。

それだけではない、南シナ海ベトナム中部の沖合40「の海域で13日軍事演習を実施すると発表。がんばれ越ちゃん! わたし20年くらい前に南シナ海の油層構地図をつくっていたころ周辺各国の主張する境界海域を点線やダッシュ点線や国別の境界線をそれぞれ違った6種類の点線で表わすのに難義したものである。しかしその頃の中国主張の境界は現在と大違い、下の図をみてください、いまでは全部分捕る構えです。中国は歴史的なゴタクを並べて、常識では考えられない領有権を主張している。

●がんばれ越っちゃん!
米仏はベトナムに自制を促し、中国批判を控えている。日台韓は音無しの構え。昨年漁船が中国艦艇に追撃される係争に苦しんだフィリピンは米日に助けを求めたが冷たくされた。その経験からフィリピンだけがいまベトナムを応援している。米仏は中国批判がチョクに通商制裁に繋がる前例に屈した。独り気をはくベトナムよ、がんばれ越っちゃん!(了)





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