安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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オバマ中東演説、粗評
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〈 2011年 5月 20日 金曜日 )


●意表を突いたイ・パ国境戻し
今週、重要な中東演説を行う予告が月曜日にあり、その概要はメディアが報じていた。その概要を一見して、聞くまでもない、あとで部下から報告を聞いて済む程度と中東の首脳たちは期待していなかった。パレスチナのアッバスは記者からコメントを求められて、『知らぬ、聞いていなかった』。記者が『オバマ大統領は1976年前の境界を国境とすると言いましたが』と伝えると、我が耳を疑ってビックリしたという。

この第3次中東戦争前の国境を中東和平討議の条件と発言した米大統領はオバマが初めて、米中東政策の連続性をブッちぎった大胆な主張である。

●ロシア、EU、国連に押されて
オバマはイスラエルに西岸入植地の撤去の圧力をかけたが、ネタニヤフに一蹴されイスラエルロビーの反対に術がなかった。この1967国境線はアラブ諸国の一致した要求から、ロシア、EU、国連が支持を明確に表明するようになった。アメリカは孤立するより4者連合でイスラエルを説得する方が理にかなっている。アラブ国家の民衆支持を得ることもできる。

●親友の忠告というレトリック
米中東政策は大転回のときにきた。ナタニエフのWH訪問前日にこの世界に向けた中東包括演説で先制攻撃をかけたオバマだが、ナタニエフが受け入れる余地は微塵もない。

オバマ演説は45分、閣僚を前列に並べ、前座呼び出し役にクリントンを配したポンパスな演出。こういう勿体ぶったやりかたが大嫌いなわたしは、オバマ演説をいつも機嫌悪く聞いている。イスラエルは米と歴史文化価値観を共有する堅い絆の国、それだからこそ真実の親友の言葉を聞いてほしい。ま、そんな趣旨を、米イ関係を損なわないように気を使う大変上手な修辞でスピーチしていました。

●その他の中東諸国へは
イ・パ関係以外では一連の反体制運動の歴史的評価と米の役割を述べている。若干コメントしておく。
政権打倒が終ったチュニジア、エジプトへの支援はカイロ演説の後で幻滅した国民に歓びはない。
イエメン、バレーンへの精神的支持は返って反発を呼ぶ。
シリアのデモは政府側の砲弾発砲で800人の死者を出している。それなのに2カ月たってやっとアサドに『改革かさもなければ去れ』とは遅すぎるし、具体的には追加制裁のみ。シリアの反体制派に反米を植え付けた。(了)





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