安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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驕れるものは久しからず
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〈 2011年 5月 16日 月曜日 )


●青天霹靂のスキャンダル
日曜日のフランスは起き抜けにカッコ悪いIMFボスの醜聞ニュースに震撼、ショックで、政略にハメラレタかと疑う向きもあるが可能性は薄い。法廷闘争に至るのか、被害者証言を認めてスピード判決となるのか、有罪が決まるまではMr Dominique Straus-kahn犯人ではないけれど、レイプ未遂の罪科は非常に重い。

名前でわかるようにストロスカーン氏ユダヤ系である。両親はモロッコから来た。大学で経済の先生をしていたので経済学に通じているが、根っからの政治家体質の人。パリの郊外都市で市長をやってうまくいった。郊外都市にもいろいろあって歴史的な郊外もあれば移民労働者のベッドタウンも多い。移民労働者が多数の市で、北アフリカから両親と共に移民した青年の経歴が市長職で成功し、シラク政権で大臣を二つ、後の財務大臣では国営企業の民営化をロシアは只同然で払い下げたが、Mr Straus-kahnは高く売りつけて財政赤字を縮小、この頃から慢心するようになってきた。

●成功の甘い味
何年か前、フランの栄光を背負うシラクがフランス語で基調演説をしたパリ国際経済首脳会議の席でのこと、財務大臣Straus-kahnが英語で演説。シラクの激怒にふれ、面前で「お前はフランス人だろ、フランス語を使え」と罵倒された。ところがストロスカーンは平然としておりましたな。あとで国際会議は英語が共通語だ、と鼻っ柱の強い男である。この件についてコラムに書いたが、この頃はユーロ圏の拡大などで評価が高く、高慢がでてきた。

その後ロワイヤルと社会党の大統領候補を争い破れた。しかしサルコジの党派を越えた人材採用ポリシーによって、IMFトップに推薦される幸運を得た。翌年米政府系住宅金融の破綻に発する金融危機が世界を襲い、IMFの活躍する出番に巡り合えた。この金融危機に各国首脳たちと互角に折衝出来るストロスカーンは大事にされ、畏れられ、ギリシャやアイルランド、ポルトガルの運命を握る立場にある。

●同情の余地無し
高慢チキになったものである。立場を利用した(本人はそう思わなくても)女性関係は数知れず、問題になったこともあったが示談解決、なかには別の金融ポストに栄転させてもらった女性も居る。これなどブッシュの計らいで世銀総裁に転出したネオコンのウルフォヴィッツが愛人を高給で傘下に押し込み辞任に至ったケースに似ているが、IMFを牛耳る専務理事はすべてメール謝罪だけで通過した。移民の貧しい青年は立身出世し、いつしか服靴腕時計などセレブを気取る高級品を身に着け、超高級車を乗り回すようになった。

ストロスカーンは来年の仏大統領選挙世論調査でM.ルペン、サルコジを離して悠々トップだったが、レイプ未遂ですべてオジャン、政治生命は絶たれた。同情の余地無し。驕れる者は久しからず。(了)





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